研究課題/領域番号 |
18K10772
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研究機関 | 株式会社国際電気通信基礎技術研究所 |
研究代表者 |
錦戸 信和 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 事業開発室, 研究員 (60610409)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 吃音 / 発話運動 / 大脳皮質-大脳基底核ループ |
研究実績の概要 |
自己ペースによる発話の脳の機能的結合モデルを作成するための仮説作成を目的とし、これまで行ってきた発話課題中の脳活動を計測するfMRI実験を今年度追加で実施した。 昨年度も含めたfMRI実験により得られた吃音のある成人6名(男性3名、女性3名)(これ以降PWSとする)および吃音のない成人12名(男性8名、女性4名)(これ以降PNSとする)のfMRIデータに対して、2 sample t検定を実施した。その結果、発話時に統計的に有意(peak levelまたはcluster levelにおいてp<0.05, 多重比較補正あり)となる差異はみられなかったが、共通して有意に賦活する部位として、左右の運動野、体性感覚野および発話や聴覚に関連する領域(上側頭回、ローランド溝弁蓋、ヘッシェル回)が示された。さらにグループごとに発話時に賦活または抑制される部位を調べるため、PWSとPNSそれぞれに対して1 sample t検定を実施した。その結果、PNSでは統計的に有意に賦活する部位として前述の部位以外に補足運動野や、大脳基底核(淡蒼球、被殻、視床)、小脳(第6小葉)が示されたが、PWSではそれらの部位は有意とならなかった。一方、活動が抑制される部位としてPNSでは左の角回、PWSでは右の角回が示された。 発話運動制御に関連する神経機構として大脳皮質-大脳基底核ループが報告がされており、PNSでは大脳皮質-大脳基底核ループに含まれる部位が発話時に賦活する部位として結果とて示されたが、PWSの場合は示されなかった。従って今回の結果から、PWSとPNSの発話運動における神経機構の差異として、大脳皮質-大脳基底核ループによる制御が関係する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度も勤務地が変更となり、他の業務に時間を割く必要が生じたため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、発話課題のfMRIを実施し、被験者を増やし発話において賦活する脳部位を調べる。さらに、賦活した脳部位の中から大脳皮質-大脳基底核ループに含まれる部位に重点をおいて機能的結合モデルの作成を試み、モデルの観点から吃音の有無による機能的結合性の差異を検討する。 また、fMRI撮像時に、脳形態の撮像および拡散強調画像の撮像も行っており、これらの解析も並行して行うことにより、吃音の有無による構造的結合性の差異も調べ、機能的結合性の差異と合わせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた脳活動計測実験の回数が減少したため。
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