研究課題/領域番号 |
18K10773
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
下村 英雄 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (10747116)
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研究分担者 |
武藤 達士 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (80462472)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 乗馬療法 / 障がい者 / 歩行分析 / 介護者 / QOL |
研究実績の概要 |
乗馬療法(ホースセラピー)は、脳性麻痺に代表される肢体不自由に対する有効なリハビリ手段として広く知られている。近年では本療法の有効性として、脳性麻痺児の歩行・バランス機能の改善や持久力の向上に加えて、情緒面の安定化や社交性の向上など副次的効果も指摘されている。その一方、介護者側のストレスに対する慎重な配慮が必要な場面にもしばしば遭遇する。 本研究では、1) 歩行機能分析を指標とした乗馬療法の長期機能予後の検証を行い、2) 母子の神経心理学的評価や各種バイオマーカーの推移からその予測因子を総合的に分析し、本療法の医学的有効性を明らかにする。最終的に、従来法・乗馬シミュレーター・振動板トレーニング群での比較対照試験を実施し、障がい者と介護者双方における代替手段を考慮に入れた最善の乗馬療法の個別化プログラムを提唱する。 本研究の目的は、脳性麻痺に対する乗馬療法のリハビリテーション科学上の有効性につき、身体機能・療育・介護面を含めた総合的なアプローチから明らかにし、障がい者と介護者(養育者)双方に最善の乗馬プロトコールを提供することにある。 研究初年度から2年度では、脳性麻痺児における標準的な乗馬プログラムを設定し、乗馬前後の粗大運動機能評価による機能評価を加えた。親の生活の質(QOL)については、質問紙(WHO QOL-BREFおよびCPQOL-Child)を用いて評価した。結果として、6ヶ月の時点で歩幅と平均加速度、左右対称性の改善と、親の心理ドメイン(QOL指標の1つ)に改善が認められた。以上より乗馬療法は、障がい児の身体改善効果のみならず、親の障害受容の一部に有効である可能性が示唆された。本年度は、被験者の幅を脳卒中ならびに発達障害に広げてデータ採取を行い、歩行ならびに心理面での改善から効率的な乗馬プログラムの作成を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度から2年目にかけて、幼児~中学生までの脳性麻痺児に対して乗馬療法を適応し、歩行分析と親のQOLの推移について検討を加えた。ランダム化比較試験とするために、デイケアでのレクリエーションを受けた年齢性別をマッチさせた対照群を設定し、1年間の縦断的研究を行った。これらの得られた予備データについて学術論文を発表した。本年度は、被験者の幅を脳卒中ならびに発達障害に広げてデータ採取を継続している。本年度は、被験者の幅を脳卒中ならびに発達障害に広げてデータ採取を行い、歩行ならびに心理面での改善から効率的な乗馬プログラムの作成を行っているが、新型コロナ感染症の蔓延にて乗馬施設でのデータ採取に支障がでており、当初予定していた十分な例数が得られていない状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も同様のデータ収集を行いつつ、最新の脳画像研究手法や生体バイオマーカーを用いて総合的に分析し、本療法の医学的な有効性を明らかにする方針である。最終的に従来法、乗馬シミュレーター(簡易型もしくはモニター付)、振動板トレーニング(Whole Body Vibration: WBV)群での比較対照試験により、障がい者と介護者双方における代替手段を考慮にいれた最善の乗馬療法の個別化プログラムを提唱していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症にて研究データ収集と解析、発表の機会が激減したため。次年度は、コロナの終息次第であるが、乗馬施設での被験者測定を再開し、シミュレーター作成のためのデータ蓄積を行う計画としている。またこれまでの中間結果を論文あるいは学会にて公表する予定である。
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