乗馬療法(ホースセラピー)は、脳性麻痺に代表される肢体不自由に対する有効なリハビリ手段として広く知られている。近年では本療法の有効性として、脳性麻痺児の歩行・バランス機能の改善や持久力の向上に加えて、情緒面の安定化や社交性の向上など副次的効果も指摘されている。一方、介護者側のストレスに対する慎重な配慮が必要な場面にもしばしば遭遇する。本研究の目的は、脳性麻痺に対する乗馬療法のリハビリテーション科学上の有効性につき、身体機能・療育・介護面を含めた総合的なアプローチから明らかにし、障がい者と介護者(養育者)双方に最善の乗馬プロトコールを提供することにあった。 初年度は、脳性麻痺児における標準的な乗馬プログラムを設定し、乗馬前後の粗大運動機能評価による機能評価を加えた。親の生活の質(QOL)については、質問紙(WHO QOL-BREFおよびCPQOL-Child)を用いて評価した。結果として、6ヶ月の時点で歩幅と平均加速度、左右対称性の改善と、親の心理ドメイン(QOL指標の1つ)に改善が認められた。以上より乗馬療法は、障がい児の身体改善効果のみならず、親の障害受容の一部に有効である可能性が示唆された。 さらに幼児~中学生までの脳性麻痺児に対して乗馬療法を適応し、歩行分析と親のQOLの推移について検討を加えた。ランダム化比較試験とするために、デイケアでのレクリエーションを受けた年齢性別をマッチさせた対照群を設定し、1年間の縦断的研究を行った。これらの得られた予備データについて学術論文を発表した。本年度は、被験者の幅を脳卒中ならびに発達障害に広げてデータ採取を継続し、最終的に被験者の幅を脳卒中ならびに発達障害に広げ、歩行ならびに心理面での改善から効率的な乗馬プログラム作成につなげる方向とした。しかし、新型コロナ感染症の蔓延にて乗馬施設でのデータ採取に支障が出たことにより、当初予定していた十分な例数が得られない状況となった。
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