研究実績の概要 |
研究最終年度では,前十字靭帯切断群(ACLT群)とACL切断後に関節制動を行った(CAM群)群を対象に,実験介入後8週間経過後、L4-5レベルの脊髄を摘出し,質量分析計(LC-MS/MS)分析を行った。検出されたデータをもとに、DAVID6.8を用い、パスウェイ解析を行った。ACLT群では、Interleukin-12 signaling、Apoptotic phaseで特にcaspase mediated cleavag、PAK-2p34の経路、Axonal growth inhibitionのパスウェイが活性化し,CAM群では、Retrograde neurotrophin signalling、Axonal growthまたsignal Transductionでは特にERK/MAPKのシグナル伝達カスケードの活性化を認めた。次に脊髄レベルにおける,脊髄後角での機械感受性に関与していPiezo channels発現形態について蛍光免疫組織化学染色により,Piezo2, CGRP,IB4の脊髄後角(Ⅰ~Ⅳ層)について分布を比較した。Piezo2は、脊髄では、ラミナⅢ・Ⅳ, IB4はラミナⅡ、CGRPは、ラミナⅠ・Ⅱに存在していた。ACL切断により、脊髄レベルのACLT群とCAM群により、Piezo2とIB4はラミナⅡで共発現し、またPiezo2とCGRPはラミナⅡ・Ⅲで共発現として観察されたことから、Piezo2が靭帯損傷後における固有感覚機能と疼痛にも関与していた。研究期間全体を通じて,膝関節損傷後の不安定が損傷後の炎症や関節不安定性後の炎症が慢性化し、靭帯や滑膜など関節内組織からも脊髄神経へ影響を与える可能性が考えられた。また脊髄神経におけるアポトーシスを誘導する経路が活性化することから、膝関節における神経機能の回復に影響を与えていることも示唆された。
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