研究課題
膝関節の前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament;以下ACL)は損傷や断裂によって、身体機能の低下や関節不安定性を引き起こし、変形性膝関節症といった二次的な疾病を惹起する。生体における他の靭帯と異なり、ACLは保存療法によって治癒するという確固たる証拠がないことから外科的再建術を選択せざる得ない状況にある。前十字靭帯損傷後の治療法として保存療法の期待が高まってきているが、臨床応用に向けては再断裂防止を目的とした治癒靭帯の強度向上や装具着用期間の短縮を目的とした治癒促進などの課題が残されている。本研究課題は、「正常な自由運動と損傷組織への力学的ストレスは前十字靭帯と半月板の治癒を促進させる」という点にあるが、今回力学的ストレスを伸張ストレスと定義し、靭帯への伸張ストレスの有無について検証した。今回、培養を行ったACL由来細胞に対する免疫蛍光染色の結果、撮像範囲内で染色され、全ての核周囲にVimentinの染色像が確認された。Vimentinは細胞骨格タンパク質と呼ばれる中間径フィラメントの一種であり、細胞分化のマーカーとしても用いられていることから培養した細胞はACL由来線維芽細胞の可能性が高いことが示唆された。その細胞を用いて、ACL由来線維芽細胞の持続的・断続的な伸張刺激に対するコラーゲンや線維芽細胞成長因子のmRNA発現量の発現量を調査した。結果、ACL由来線維芽細胞に対する持続伸張刺激によって、コラーゲン関連のCOL1A1、COL3A1mRNA発現量が増加したことから、腱治癒におけるコラーゲン増加においては伸張刺激が重要な要因である可能性を示した。
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