研究課題
本研究はマウス結腸癌発癌モデルと皮下腫瘍モデルを使用した。結腸癌発癌モデルはC57BL/6マウス(5週令・オス)を使用し、1,2- dimethylhydrazine (DMH)を40 mg/kgを腹腔内に週1回を10週間注射にて播種し作成した。皮下腫瘍モデルにおいては、BALB/cマウスの肩甲骨間の皮下に同系の大腸癌細胞株であるCT26を1×10^7 / 0.2 mLを投与し作成した。各モデルにはPBSを使用した対照群も作成し、比較検討した。各モデルの骨格筋萎縮とHMGB1の関係を検証するため、腫瘍内、血中、筋内の炎症性サイトカイン、HMGB1の濃度を測定した。また骨格筋特異的にはHMGB1レセプターであるHMGB1受容体(RAGE)やTLR4、骨格筋萎縮の指標としてオートファジー関連タンパクの検索やミトコンドリアの代謝を検索した。またこれらの実験は適宜培養実験においても検証を実施した。骨格筋は発癌モデル、腫瘍モデルで萎縮を誘導した。腹水中のHMGB1、TNF-aは高値を示した。オートファジー誘導ストレスタンパク質HMGB1の発現は、マウス悪液質モデルの筋肉において増加した。この効果は、終末糖化産物最終産物に対するHMGB1受容体(RAGE)を介した、筋肉中のピルビン酸キナーゼPKM1およびピルビン酸キナーゼ活性の発現低下と関連していた。骨格筋では、HMGB1の添加によりリン酸化mTORの低下とオートファジー実行タンパク質発現増加によりオートファジーが誘導された。その結果、血漿グルタミンは増加し、癌細胞におけるグルタミン取込みとグルタミンからのWarburg効果が促進された。本実験結果より、腫瘍から放出されるHMGB1が骨格筋のオートファジーを促進し、癌におけるエネルギー代謝を促進することが確認された。これらの所見は、HMGB1ががん関連骨格筋萎縮と癌進展をもたらす原因である可能性を示唆すると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
マウスモデルにより、HMGB1が悪液質・骨格筋萎縮にオートファジーを介して関連することを明らかにした。
次年度は、ヒトにおけるHMGB1の悪液質・骨格筋萎縮におけるマーカーの可能性を検討する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 7件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 7件) 備考 (1件)
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