研究課題/領域番号 |
18K10789
|
研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
太田 喜久夫 藤田医科大学, 医学部, 教授 (00246034)
|
研究分担者 |
松本 英司 国際医療福祉大学, 医学部, 准教授 (50337341)
小川 朋子 国際医療福祉大学, 大学病院, 准教授 (70424017)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 上喉頭神経 / 干渉波刺激 / 嚥下反射 |
研究実績の概要 |
嚥下反射は、島皮質延髄路を介する随意的惹起と迷走神経感覚路からの末梢反射性惹起がある。随意的嚥下反射惹起機能の評価方法として反復唾液嚥下テスト(RSST)がある。今回、唾液嚥下を標準化する目的で反復唾液嚥下ごとに1mlのとろみ液を追加して嚥下させる反復とろみ液嚥下テスト(RTST)を試みた。この2つの指標を用いて、健常者16名に対して上喉頭神経干渉波刺激前後で嚥下反射惹起が変化するかについて検討した。上喉頭神経への干渉波刺激は、2000Hz(干渉波50Hz)、2mA、20分間とした。結果は、RSSTでは30秒間の嚥下回数が 8.0±1.9回から8.9±1.8回に増加し、paired-t検定でp<.05と有意差がみられた。しかし、RTSTでは10.2±2.8回から10.9±2.8回で、paired-t検定では有意差がみられなかった。 また、RTSTは健常者では実施可能であったが、偽性球麻痺患者では嚥下ごとに1mlのとろみ液を口腔内にいれる行為が、嚥下に対する注意をそらすことや上肢・手指の巧緻性低下などの理由で嚥下反射誘発を阻害するなど、本来の目的である嚥下反射惹起の評価指標として不適切と考えられた。 随意的嚥下反射の評価法としては従来のRSSTを用いることとし、脳血管障害による嚥下障害患者10名に対して同様の条件で上喉頭神経干渉波刺激を実施し、随意的嚥下反射惹起の促通状況を検討した。結果:刺激前RSST3.4±2.5回、刺激後RSST3.6±2.6回で、有意差は見られなかった。 末梢性嚥下反射路の評価法の検討:上喉頭神経は、迷走神経の枝でその感覚枝は、奥舌や喉頭蓋谷、喉頭を支配する。上喉頭神経感覚枝に対する干渉波刺激の効果を判定する評価法として、喉頭蓋谷に0.4mlの液体を持続落下させ、嚥下反射が惹起される時間を測定する簡易嚥下惹起テストを用いて研究を進める予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
代表研究者である太田喜久夫が、2018年8月に国際医療福祉大学から藤田医科大学に転勤したため、研究計画を実施できる体制を整えることに時間を要したため。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究は嚥下障害患者に対する臨床研究であり、代表研究者が主な研究フィールドとしている関連病院との共同研究として倫理委員会に申請し、研究を進めいていく予定である。 2018年度は随意性嚥下反射機能の評価法の検討を実施し、RTSTを試みた。2019年度は、末梢感覚性嚥下反射機能の評価法の検討を実施する。上喉頭神経は迷走神経の感覚枝で奥舌や喉頭蓋谷、喉頭を支配する。喉頭蓋谷の感覚閾値が上喉頭神経干渉波刺激によって変化する可能性があり、その効果検証を実施する必要がある。嚥下内視鏡検査を実施するときに5Frのチューブを鼻腔から挿入して0.4mlの液体を喉頭蓋谷に滴下し、嚥下反射が惹起されるまでの時間を測定する方法(簡易嚥下誘発試験:SSPT 寺本1999)を試みる予定である。これにより、上喉頭神経の感覚閾値が上喉頭神経への干渉波刺激で改善することが立証できると考える。 2020年度は、t-DCSによる嚥下反射惹起の効果を測定する方法を検証する予定である。従来の報告ではRSSTによる効果判定がなされているが、簡易嚥下誘発テストを用いた指標も検討したのちに、t-DCSと上喉頭神経干渉波刺激を併用した嚥下機能の効果検証に関する研究計画を立案して関連病院での臨床研究を進める予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が国際医療福祉大学から藤田医科大学へ異動したため、国際医療福祉大学にあったt-DCS装置を藤田医科大学で購入する必要が生じた。医療機器ではないので倫理委員会への研究計画の申請が遅れたため、前年度での購入を見送った。次年度には本研究計画の承認を得たうえでt-DCSを購入する予定である。
|