研究課題/領域番号 |
18K10791
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
羽鳥 浩三 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20286735)
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研究分担者 |
鈴木 康司 順天堂大学, 医学部, 非常勤講師 (30615977)
藤原 俊之 順天堂大学, 医学部, 教授 (50276375)
肥沼 武司 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), その他部局等, その他 (60816271) [辞退]
谷 真美 順天堂大学, 医学部, 助手 (90817199)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 嚥下障害 / パーキンソン病 / 嚥下造影検査 / 経頭蓋磁気刺激 / 動作緩慢 |
研究実績の概要 |
経頭蓋磁気刺激(iTBS)の効果指標を設定することを目標として、嚥下造影検査による動画を静止画に分解し、舌骨の前方移動と垂直移動を各々分析した。嚥下運動は随意運動と嚥下反射の複雑な複合運動であり、私たちは、随意的な舌骨の拳上開始から嚥下反射への連続的な運動(sequence movement)が障害されることが、パーキンソン病(PD)の嚥下障害の重要な一要因である可能性を示した。舌骨の随意的な挙上開始(口腔期後期)から嚥下反射が惹起された時点と接骨の最大挙上、最大前方移動(咽頭期)までの舌骨移動の連続的な動きを各々設定して、随意的開始から最大挙上(最大前方移動)までの時間と移動距離の各協調性(リズム)を検討した結果、正常対象(NC)と比較し、時間的協調性はPD、NC両群で差はなく、PD群において移動協調性(移動リズム)において高い相関を示した一方で、PD群では相関関係は得られなかった。これは、PDでの口腔期から咽頭期への連続的な嚥下運動の規則性が障害されている可能性を示唆する所見と考えられる。これらの結果が、どのようにPDの病態と関わりがあるのかについて、PDの嚥下障害と主要運動症状である動作緩慢との関連性を指摘する既知の報告は多いが、一般に運動の速度を対象にしている報告がほとんである。しかしながら、動作緩慢は単一の運動単位ではなく、主に速度、振幅、リズムの3要素からなる運動障害であり、各々の要素に対するL-dopaの有効性の相異も示唆されている。これらよりこの運動リズムと時間リズムを検討することは、動作緩慢の各要素を同時に検討できる利点があり、これらを経頭蓋磁気刺激効果の指標とすることが有用であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
初年度では、経頭蓋磁気刺激の効果指標を設定する目的で、パーキンソン病(PD)の嚥下障害について、嚥下運動に関する随意運動(舌骨の随意的惹起開始)と嚥下反射の両者の複合運動である口腔期後半から咽頭期嚥下について、嚥下造影検査の所見を用いて、正常対照(NC)と比べ随意的な舌骨の挙上開始(I)から嚥下反射の惹起開始から嚥下反射惹起開始(R)までおよび嚥反射惹起開始(R)から最大前方移動(M)の舌骨運動を移動距離と移動時間の協調性として、(I-R)と(R-M)の相関関係を求めた結果、移動の時間的協調性(時間リズム)にPD、NC両群で相違は認めないが、移動距離の協調性(移動リズム)において、PD群では移動の協調性が有意に保持されていないことが明らかとなった。このことは、PDでは嚥下時の運動リズムが障害されており、これがPDの嚥下障害の一要因となる可能性がある。時間リズムと移動リズムの解離は、PDの動作緩慢にも関わることから、この結果を効果指標とすることが可能と考えた。併せてPDの主要運動症状である動作緩慢が、運動振幅、運動スピード、運動リズムに関わることから、L-dopaなどの抗PD薬の有効な嚥下障害と効果不応の嚥下障害の相異評価に有用である。経頭蓋磁気刺激に関しては、現在刺激部位の選定に配慮しており、感覚障害が嚥下障害に関与する可能性から磁気刺激部位において末梢での磁気刺激(シータバースト刺激)の余地も併せて検討している。この成果は2018年の第55回日本リハビリテーション医学会学術集会において発表した。
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今後の研究の推進方策 |
パーキンソン病(PD)の嚥下障害は、運動障害と感覚障害(喉頭)の両面が関与するため、磁気刺激(iTBS)効果を検討するに当たり、当初の前運動野を標的としているが、並行して末梢からの感覚入力に対する磁気刺激(iTBS)を考慮している。これは、PDの嚥下反射に関わる舌咽神経および迷走神経(おもに舌骨上筋群を標的)とその感覚枝である上喉頭神経(喉頭の感覚)を磁気刺激するものであり、現在まで内外の当該研究は見当たらない。しかし、最新のPDの嚥下障害の病態から末梢の磁気刺激(iTBS)を臨床的に検討することは、PDの嚥下障害の病態に基づいた有効な治療法となる可能性がある。なお、検討にあたっては、刺激部位として現在舌骨上筋群を標的としているが、感覚入力が舌咽神経、迷走神経領域となるため、想定されるリスク(徐脈や意識消失、疼痛など)を慎重に検討しており、修正推進方策として申請準備を行っている。
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次年度使用額が生じた理由 |
経頭蓋刺激(iTBS)療法施行に関わる諸経費および当該研究課題に関連する他施設研究状況調査、当該研究成果報告、討論を目的とした内外学会参加を計画している。
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