研究課題/領域番号 |
18K10805
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
福岡 達之 広島国際大学, 総合リハビリテーション学部, 准教授 (10781289)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 舌の筋力トレーニング / 舌圧 |
研究実績の概要 |
本研究では、舌のレジスタンストレーニング(RT)が最大舌圧と嚥下時の舌圧に及ぼす影響について検討することを目的とした。今年度は健常若年者13名(男性6名、女性7名)、平均年齢20.5±0.5歳を対象とし、一定期間の舌のRTを実施し、RT前後における最大舌圧と嚥下時舌圧の変化を検討した。舌のRTはJMS舌圧測定器を用い、最大舌圧の60~80%の負荷強度で舌の挙上運動を1日60回(10回×6セット)、週3日、8週間継続するプロトコルとした。2週毎に最大舌圧を測定し、負荷強度を漸増した(1週目は60%、2週目以降は80%)。評価は最大舌圧と嚥下時舌圧の最大値とし、ベースライン、4週、8週およびdetraining効果としてトレーニング終了後1か月、2か月の計5時点で測定した。嚥下時舌圧の測定は唾液のEffortful swallowをタスクとし、舌圧センサシートシステム(SwallowScan, Nitta)を用い、口蓋に貼付した5箇所の感圧点における舌圧最大値を算出した。 8週間の舌のRTにより、全ての対象者で最大舌圧値は上昇した。Effortful swallowの嚥下時舌圧も同様にトレーニング経過とともに上昇がみられ、口蓋の前方部だけでなく後方周縁部を含む広い部位で高い値を示した。detraining効果については、最大舌圧、嚥下時舌圧ともにトレーニング終了後1か月、2か月で徐々に低下したが、ベースラインと比較すると高い値であった。 舌のRTは、舌の随意的な挙上力(舌筋力)だけでなく、嚥下時舌圧にも影響を及ぼし、その効果は一定期間維持されることが明らかとなった。前方部における舌のアンカー機能が強化されたことで口蓋周縁を含む広い部位で舌圧が上昇したのではないかと考えた。次年度は今年度の研究結果を踏まえ、施設高齢者を対象に研究を実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、健常若年者および高齢者を対象として研究を実施する計画であり、今年度は健常若年者を対象として研究を実施した。研究結果より、健常若年者において、一定期間の舌のレジスタンストレーニングが最大舌圧および嚥下時の舌圧を上昇するという訓練効果を明らかにした。健常若年者の結果を踏まえ、高齢者を対象とした研究の実施を予定しているが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、当初予定していた施設入所の高齢者を対象とする研究の実施が延期となっている。
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今後の研究の推進方策 |
現在、施設高齢者を対象とした研究の実施を延期せざるを得ない状況であるが、次年度の可能な時期に速やかに研究を実施する予定である。また、健常若年者から得られたデータについて、嚥下時の舌圧に関しては、舌-口蓋接触部位の舌圧持続時間、舌圧積分値など嚥下時舌圧パターンの詳細な解析を進め、訓練効果に及ぼす影響について検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により、本研究の発表を予定していた学会(第43回日本嚥下医学会)の開催が延期となり、出張費等の取消により次年度使用額が生じた。上記延期学会の出張費に次年度使用額を計上する計画である。
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