研究実績の概要 |
本研究の目的は、舌の筋力トレーニングが最大舌圧および努力嚥下時の舌圧に与える影響を調査することであった。前年度は健常若年者を対象としたデータ測定を終了し、最終年度は、高齢者を対象に研究を実施する予定であったが、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、施設に入所する高齢者への介入が困難であった。 今年度は昨年度に測定したデータの整理、解析を進め、以下のような結果が得られた。健常若年者13名(平均年齢20.5歳)を対象に舌の筋力トレーニングを8週間実施し、ベースライン、トレーニング開始後の4週、8週およびトレーニング終了後の4週、8週の8時点について、最大舌圧、嚥下時舌圧を解析した。最大舌圧はトレーニングの4週後に増加し、ベースラインと比較し有意差を認めた(F(4, 48)=42.366, p<0.001)。舌圧センサシートで測定した努力嚥下時の舌圧は、口蓋前方部Ch1 (F(4, 48)=9.855, p<0.001)、口蓋中央部Ch2 (F(4, 48)=13.179, p<0.001)、口蓋周縁部ChR (F(4, 48)=9.811, p<0.001)およびChL (F(4, 48)=9.861, p<0.001)で有意な増加を認めた。最大舌圧はトレーニング終了後の4週間、8週間後に有意に減少したが、努力嚥下時の舌圧はベースラインと比較し高い値が維持されていた。このことから、舌の筋力トレーニングは、最大舌圧だけでなく、嚥下時に努力発揮される舌圧を増大させる効果があると考えられた。また、舌の筋力トレーニングにより改善した努力嚥下時の舌圧は最大舌圧と比較し維持されやすいことが明らかとなった。 以上の結果は、第43回日本嚥下医学会(2020年7月)にて公表し、現在、国際雑誌Archives of Oral Biologyに投稿中である。
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