研究課題/領域番号 |
18K10808
|
研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金子 秀和 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (20356801)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | リハビリ / 学習 / エラー / アシスト / 運動感覚 / フィードバック / 脳損傷 / 片麻痺 |
研究実績の概要 |
我々は、脳梗塞後のリハビリ訓練中に所望の動作を引き起こそうとする筋肉の力に逆らうように外力を加えることによって、学習過程及びリハビリ過程の促進効果が現れると考えている。これまでに健常ラット及び片側前肢感覚運動野脳梗塞ラットを用いて選択反応時間タスクの逆転学習を行わせる際、選択刺激呈示の一定時間後の応答時刻付近のタイミングで正応答動作に逆らうような誤応答動作を強制的に誘発することによって学習過程を促進させうることを実証した。本研究では、同様の条件下で、応答動作に同期して正応答動作及び誤応答動作を強制的に誘発することによって学習過程を促進あるいは遅延させうることを実証し、運動企図の発現するタイミングに合わせて運動感覚を誘発することで、脳損傷後の回復メカニズムと考えられる神経可塑性が促進されうるメカニズムを明らかにする。 令和元年度は、片側前肢感覚運動野脳梗塞ラットに選択反応時間タスクの逆転学習を行わせ、応答動作のタイミングに同期して正反応側あるいは誤反応側レバーを駆動して正応答動作あるいは誤応答動作を強制的に引き起こすことによる効果を明らかにするための行動実験データを引き続き収集した。また、レバー駆動に伴うラットの姿勢の変化をモーションキャプチャシステムによって計測し、ラットの体幹がレバー駆動によって生じた外力の方向に移動するのに対して、頭部の動きは逆方向に移動していることが分かった。このことから、レバー駆動は反射経路を通じて何らかの感覚入力を生じており、反射経路を通じて中枢神経系での可塑的な変化に影響を及ぼす可能性が十分あると考えられた。さらに、神経メカニズムを解明するための脳波計測用多点電極を試作した。次年度以降に埋め込み実験を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の目標は、脳梗塞ラットに選択反応時間タスクの逆転学習を行わせ、応答動作に同期して正応答側あるいは誤応答側レバーを駆動することにより、条件刺激に同期してレバーを駆動する場合よりもエラー率の改善が促進されることを実証することが目標であった。しかし、これまでに当初目標の75%程度の個体数でのデータを収集してきていることから、やや遅れて研究は進捗しているものと考えている。また、レバー駆動によって加えられた外力がラットの姿勢にどのような変位を生じるか明らかにするためのモーションキャプチャでの計測については、8匹のラットでのデータを収集した。次年度以降に取りまとめる。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度は、脳表に多点電極を埋め込んで脳波を計測しながら、モーションキャプチャによるタスク遂行時の動作計測を行い、タスク中の空圧刺激や応答動作などの各種イベントやレバー駆動による外力の印加によってラットの脳神経系にどのような活動を生じるのか明らかにしたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
脳波計測用の多点電極の密度が高く、試作段階での試行錯誤を繰り返している。そのため、複数のラットへの埋め込み用電極に関する消耗品等を購入する時期が遅れたため、次年度使用額が生じてしまった。したがって、最終年度に実施することになってしまった神経活動計測実験に本残額を使用する。
|