骨格筋ミトコンドリアは運動や除負荷等の刺激に応じて量的・構造的に変化する。しかしながら、筋線維内に存在するミトコンドリア構造の適応については不明である。前年度までに、マウス下腿筋群の筋萎縮により、筋線維内のZ膜近傍のミトコンドリア構造が崩壊していることを報告した。 また、筋萎縮から筋量を回復させたところ、ミトコンドリア構造の崩壊は維持していた。 本年度は、継続した運動により骨格筋内のミトコンドリアがどのような適応を示すか明らかとするために実験を行なった。C57BL/6マウス(雄、8週齢)を通常飼育群と4週間ランニングホイール付きケージで飼育する運動群に分けた。実験期間終了後、長趾伸筋を摘出し、ミトコンドリア構造について観察した。長趾伸筋から単一筋線維を単離し、Mitotracker Redで染色し、超解像度の光学顕微鏡を用いて撮像した。撮像した2次元データから3次元画像構築を行った。4週間の走運動を行なった筋線維と通常飼育を行なった筋線維を比較したところ、視覚的にミトコンドリア構造の違いは認められなかった。ウェスタンブロット法により、骨格筋のミトコンドリア呼吸鎖複合体ならびにミトコンドリア構造に関わるタンパク質量について解析を行なった。運動群では通常飼育群と比較し、呼吸鎖複合体タンパク質とミトコンドリア融合に関わるOpa1タンパク質量が増加しており、走運動の適応が起きていることが示された。以上の結果より、4週間のランニングホイール運動により、骨格筋ミトコンドリア構造は筋萎縮時のようなドラスティックな適応を示さないことが明らかとなった。今後は詳細なミトコンドリア構造の解析を行う必要がある。
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