骨格筋ミトコンドリアは運動や除負荷等の刺激に応じて量的・構造的に適応する細胞内小器官である。本研究では、運動や除負荷に対する骨格筋内のミトコンドリアを光学顕微鏡で観察し、その適応を明らかとすることが目的である。これまで坐骨神経切除による除負荷によりz膜近傍のミトコンドリア構造が崩壊することを明らかにし、後肢懸垂による除負荷でも同様の結果が得られた。さらに、後肢懸垂後の再設地により、筋湿重量が回復したにもかかわらず、ミトコンドリア構造の回復は認められなかった。4週間のランニングホイール運動が及ぼす影響についても検討を行ったが、明確な構造の違いは認められなかった。 本年度は、除負荷による筋萎縮が骨格筋内のミトコンドリアダイナミクス(ミトコンドリアの融合と分裂)関連タンパク質の発現に及ぼす影響を明らかとするために実験を行った。ICRマウス(オス、2-3ヶ月齢)を対象とし、坐骨神経切除による筋萎縮を惹起した。手術から14日後に全脛骨筋を摘出し、凍結切片を作成した。Tom20、Mfn2、Fis1抗体で免疫蛍光染色し、光学顕微鏡で撮像した。その結果、通常飼育のマウス骨格筋と比較し、除神経サンプルでは細胞膜直下でミトコンドリアマーカーであるTom20のシグナルが弱くなっていた。ミトコンドリア融合にかかわるMfn2、分裂にかかわるFis1はTom20と重なる染色パターンを示したが、通常飼育サンプルと除神経サンプルに大きな差はなかった。今後解析数を増やし、データを蓄積する予定である。 さらに、これまでの研究成果をまとめ原著論文の執筆活動を中心に行い、現在投稿準備中である。
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