研究課題/領域番号 |
18K10810
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮川 俊平 筑波大学, 医学医療系, 教授 (10200130)
|
研究分担者 |
田原 麗衣 筑波大学, スポーツR&Dコア, 研究員 (50794286)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 酸化ストレス / 抗酸化力 / コンディショニング / 筋疲労 / 競技特性 / 女性アスリート |
研究実績の概要 |
近年、酸化ストレスと関連しない疾患は存在しないとまでいわれているが、運動習慣や運動様式の違いが酸化ストレス度および抗酸化力に与える影響は不明な点が多い。さらに、抗酸化物質の摂取は抗酸化力を向上させることで酸化ストレス度の上昇を抑制するとされているが、抗酸化物質の摂取が筋疲労に対してどのような影響を与えるかについては不明である。本研究では、1)運動習慣や運動様式の違いが酸化ストレス度および抗酸化力に与える影響を明らかにすること、2)酸化ストレス度および抗酸化力と筋疲労の関連を検討し、抗酸化物質摂取が酸化ストレス度および筋疲労に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 平成31年度は、平成30年度に引き続き運動習慣のない健常若年者約100名の測定を行った。 測定時に月経中であった女性アスリートを対象とし、過去1週間の高強度運動時間の中央値(12時間/週)により2群に分類すると、高強度運動を行っていた時間が長かった長時間群において短時間群と比較して、抗酸化力(BAP)は有意に低値を示した。このことから、月経期に高強度運動を多く行っている女性アスリートは、月経期の抗酸化力が低い可能性が示された。また、競技特性が酸化ストレス指標に与える影響を明らかにするため、手指部への物理的な刺激が多い競技(Hand群;ハンドボール・バレーボール・柔道・剣道)、少ない競技(Non-Hand群;サッカー・水泳・陸上)で2群に分類し検討した。酸化ストレス度は、Hand群がNon-Hand群と比較して有意に高値を示した。一方、主観的な疲労度は、Non-Hand群がHand群と比較して有意に高値を示した。Hand群において、主観的な疲労度が低いにも関わらず酸化ストレス度は高いことから、練習等による日常的な手指部への物理的な刺激は、指先採血による酸化ストレス度に対して影響を与える可能性があることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
検討課題①の運動習慣と酸化ストレス指標との関連については、運動習慣の少ない、もしくは運動習慣のない一般健常若年者を対象として、100名程度の測定を行った。また、これまでの女性アスリートの測定データを用いて、過去1週間の高強度運動時間と酸化ストレス指標との関連を検討した。令和2年度は、アスリートと一般健常若年者のデータを合わせて解析する予定である。 検討課題②の運動様式と酸化ストレス指標との関連については、手指部への物理的な刺激によって群分けし検討を行った。手指部に物理的な刺激が多い競技種目において、主観的な疲労度が低いにも関わらず酸化ストレス度が高いことから、指先採血による酸化ストレス度に対して影響を与える可能性があることが示唆された。 検討課題③の抗酸化物質摂取と酸化ストレス指標、筋疲労との関連については、摂取する抗酸化物質の選定と実験計画を作成している。 以上のことから、概ね順調に進捗している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度において、検討課題①運動習慣の違いと酸化ストレス度(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)との関連、検討課題②運動様式の違いとd-ROMsおよびBAPとの関連について検討し、論文作成を行う。また、検討課題③抗酸化物質摂取が酸化ストレス度(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)と筋疲労の関係に与える影響について実験を行う。具体的には、大学生30名程度を対象として、一定期間の抗酸化物質摂取により、「d-ROMsおよびBAPが変化するか」および「筋疲労や疲労からの回復に及ぼす影響」について検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
昨年度の繰り越しがあったうえ、本年度の測定が当初予定していた数に満たなかったことから購入する消耗品費等が減少し次年度に繰り越すこととした。 次年度使用額と当該年度以降分として請求した予算は、本研究の主要な測定項目である酸化ストレス度指標のd-ROMs、抗酸化力指標のBAPの測定や唾液成分の測定に必要となる消耗品や研究課題③で摂取させるサプリメント(抗酸化物質)の購入に使用する。被験者への実験協力謝金および測定補助者への協力謝金も予算に計上している。旅費として、外部の大学等での測定や学会等への参加に必要となる経費を計上している。また、研究成果の発表として学術論文への投稿を予定しており、その際の校正料、投稿料等にも使用予定である。
|