本研究は青年期の体力と活動量計により客観的に計測した現在の運動習慣の関係を検証するコホート研究である。追跡期間は3~55年で、有効データは約1000人から得られた。大学初年時に体育授業の一環で体力テスト4種目(垂直とび、反復横跳び、腕立て伏せ、踏み台昇降)を実施しており、そのデータを用いた。現在の運動習慣は、評価が確立している3軸加速度センサ内蔵の活動量計(Omron Active style Pro HJA-750C)を腰部に1週間装着することを求めることで、計測した。運動習慣の指標として、3METs以上の中高強度身体活動(MVPA)、歩数、座位行動(座りすぎ、1.5METs以下の活動)を算出した。解析の結果、把 握した体力要素の内、上肢の筋力・筋持久力を反映する腕立て伏せが大学初年時に優れていた人ほど、追跡時点においてMVPAや歩数が多く、座位行動が少ないことが明らかとなった。その他の体力要素については、MVPAや歩数、座位行動との関連はみられなかった。この解析より、青年期に筋力や筋持久力が十分に発達するような運動・スポーツ実践をおこなうことが、より長期的に見た運動習慣の形成・保持に有益である可能性が示された。この成果は、高等学校や大学における体育授業や課外活動におけるスポーツ実践の重要性を改めて示すものである。今後は、大学時代の体育授業に対して、楽しい印象を持っているか否か、と現在の運動習慣との関係を検証する予定であり、分析を開始している。
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