【目的】クラシックバレエにおける片脚支持回転動作は,腕を回しながら爪先立ちを行うため動的な状態でバランス調整を必要とする.動的バランスの調整では,体肢の運動を協調させて転倒の勢いが相殺されていると考えられるが,その動力学的機構は不明である.本研究は上体と下肢がダイナミックに動く状態での片脚支持爪先立ち動作及びその保持,片脚支持回転動作を題材に,バランス保持戦略の選択とその制御について調べる. 【研究計画】複数回の回転を行う回転動作を撮影し,床から足裏に作用した力や足圧分布・動力学的解析を用いて,足裏に作用する力、各関節トルクの身体重心の並進運動への貢献が回転数に応じてどのように変化するかを調べる. 【研究成果】ピルエットの回転前に両脚支持で構えた状態では、爪先と踵で水平面内で逆方向の床反力が作用し足の回転を防いだ。このとき、両上肢を水平面内で旋回することによって、回転ための角運動量を生成していた。回転数の増加に応じて運動依存項による角運動量生成が増加し、上肢による角運動量生成はムチ様動作の仕組みを応用していることが分かった。体幹回旋トルクは角運動量生成に対し最も大きく貢献した。体幹回旋トルクを発揮するために、両下肢の膝屈伸トルクや股関節内外転トルクを発揮して、下肢の水平面内の回転を止めることが推測された。 両脚から片脚支持への移動局面において重心は軸足側へ約1cm側方へ、約2-4cm前方へ移動した。回転数の増加に伴い、後脚の側方移動への貢献が軸足となる前脚と逆転し、移動を止める方向に働いた。重心回りの全身角運動量は、下肢各関節トルクによる角運動量生成は互いに相殺しあい、体幹のトルクによって生成された角運動量が全身の角運動量の方向を決めていた。回転数の増加に伴い、軸足となる脚によるの貢献による重心の水平移動が促進され、体幹トルクが重心回りの転倒の勢いを決定づけることが分かった。
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