研究実績の概要 |
本研究は、単発的な運動がどのような種類の認知機能の改善に有効かについて検証することを目的としている。運動による気分改善効果をうつ病など心の病の「予防」のために利用していくには、まず、単発的な運動の効果を明確にしていくことが必須である。2019年度は、①競合する反応行動を抑制し(反応抑制)、適切な行動を選択するフランカー課題、および②情報の短期的保持とそれを逐次更新する能力を評価する2-back課題を用いて、事前に行う短時間中強度の自転車運動による認知機能への影響を検証した。さらに、上記の課題はいずれも前頭前野の関与が強いとされているので、新規に購入した光イメージング脳機能測定装置(fNIRS)を用いて、今年度は前頭前野の血流量の変化についても検証した。 その結果、フランカー課題では、認知的干渉量が運動条件でのみ有意に減少した(プレ49.9 vs. ポスト38.9 ms, p < 0.05)。2-back課題では、反応時間、正解率ともに運動の効果はみられなかった。しかし、いずれの課題においても、前頭前野の血流量は、運動後の課題遂行中においてのみ有意に高値であった(フランカー課題における血流の変化量[ポストとプレの差]:運動条件0.82 vs. 安静条件0.17 mM・mm, p < 0.001, 2-back課題:運動条件0.78 vs. 安静条件0.09 mM・mm, p < 0.01)。 すなわち、運動により注意機能を司る前頭前野が活性化し注意力が高まったことで、不必要な情報に惑わされず適切な選択を行うという能力が向上したことが示唆された。一方、2-back課題で運動の効果が得られなかったことから、より難易度が高い課題では運動の効果が得られにくいことが示唆された
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