研究課題/領域番号 |
18K10822
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研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
三宅 克也 国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (30219745)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 細胞膜損傷 / 細胞膜修復 / アクチン / ミカル1 / マイオカイン / 二光子レーザー / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
骨格筋線維は、運動などの生理的な物理的負荷によって、その5~30%が常に細胞膜損傷修復を繰り返している。我々はDysferlinを作れない肢体型筋ジストロフィーは細胞膜の修復ができないことを報告した。また、ウニ卵や培養細胞を用いた実験により、膜修復には細胞外Ca2+が必要であり、膜損傷部から流入するこのCa2+の濃度差が引き金となって起こるエキソサイトーシスが必要であることも報告した。細胞内からの膜供給源は、ライソゾーム、卵黄顆粒、分泌顆粒など様々な報告があるが明瞭にはわかっていない。さらに、我々は細胞膜損傷時、損傷部から流入する細胞外カルシウムによってFアクチンが脱重合し、細胞内小胞の融合を助け、細胞膜が修復するメカニズムを報告した。 本研究では、培養細胞BS-C-1を用い、膜標識試薬FM4-64とGFP-MICAL1, MICAL2, MICAL3,およびMICAL-L1を用いて、それらが標識する膜修復時の膜動態を多光子レーザー顕微鏡で観察した。二光子で損傷された部位に、FM試薬で強く標識された新しい修復膜が観察され、その部位に細胞質から供給されるMICAL1-GFPの素早い蛍光波の集積が観察された。このダイナミックな蛍光波の動態はMICAL1のみについて観察された。またMICAL1集積直後にLifeAct-RGPによりアクチンの脱重合が観察された。さらにMICAL1ドミナントネガティブ体(ΔCC)を導入したところ膜修復を行うことはできなかった。マウス骨格筋を用い、エレクトロポレーションによりGFP-MICAL1およびLifeAct-RGPを発現させ、二光子レーザーによって膜損傷を起こし、共焦点レーザーによって膜修復動態を観察した。その結果、MICAl1が膜損傷部およびその周辺に強く集積し、同時にアクチンの脱重合と膜の集積が観察された。これらの結果から、骨格筋線維の膜修復メカニズムについても、MICAL1によるアクチンの素早い脱重合が膜修復に必要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は骨格筋線維膜の損傷修復時に分泌されると考えられるマイオカインについて調べた。その候補の一つミカル1について細胞膜修復時の動態について培養細胞および骨格筋線維を用いて観察を行った。このタンパクは損傷修復時に必須のFアクチンの脱重合に関わるタンパクであることが推察された。これらの結果は解剖学会において報告を行った。ミカル1の直接的な分泌は顕微鏡で観察することはできなかったが、顕微鏡や周囲の研究環境を整える事が出来た。このシステムを用い次のステップに進む事が可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次に細胞膜の修復時に細胞質から分泌されるサイトカイン候補、FGFファミリー、炎症反応に関わるインターロイキンについてGFPの作製を行い、細胞膜損傷修復時におけるそれらの分泌動態を高速レーザー顕微鏡によって観察を行う。また、シリンジローディングなどの損傷方法を用い、損傷時に分泌されるサイトカインをウエスタンブロティングによって検出する。またマウスの走行実験を行い、運動による骨格筋からのサイトカイン(マイオカイン)の測定を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
高価な抗体は慎重な検討を要したので、本年度はこれまで持っていた抗体を用い前実験に徹した。次年度は多くの抗体やプラスミドを購入する予定である。
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