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2021 年度 実施状況報告書

細胞膜損傷修復時に起こるマイオカインの分泌機構

研究課題

研究課題/領域番号 18K10822
研究機関国際医療福祉大学

研究代表者

三宅 克也  国際医療福祉大学, 成田保健医療学部, 教授 (30219745)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2023-03-31
キーワード細胞膜損傷 / 細胞膜修復 / カルシウムイメージング / 細胞外小胞 / マイオカイン / 二光子レーザー / 膜融合 / 小胞輸送
研究実績の概要

我々は30年にわたり、細胞膜損傷修復によって物質が細胞内と細胞外を行き来する現象を観察し報告してきた。この膜損傷修復は生理的な条件下で様々な細胞で起こっていることも明らかにしてきた。さらに、高感度GaAsP搭載型多光子レーザー顕微鏡によるLIVEイメージングを行い、膜修復動態をリアルタイムの分子の動きで明らかにしつつある。本研究では、多光子高速スキャンレーザー顕微鏡(LSM880, Aryscan, 2-photon)を用い、運動による筋線維膜損傷修復とマイオカインの分泌過程を顕微鏡下に再現し、筋線維からのマイオカインの多様な分泌現象を、高速・高解像レベルで明らかにすることを目的としている。さらに、急速凍結法とディープエッチ電顕法により細胞損傷・修復時におこる膜融合による修復過程を超微形態的に明らかにする。
我々はマイオカインの候補として、これまで線維芽細胞成長因子(FGF)について調べて来た。とくにaFGFとbFGFは細胞質内に可溶性タンパク質として存在し細胞膜損傷時に筋線維から分泌されることを明らかにした。しかしながら、小胞に存在しない細胞質に存在するタンパク質の分泌形式は全く不明である。FGFが細胞外小胞(エクソゾーム)に梱包されて分泌されるのか、それとも損傷部から可溶性タンパクのまま漏出分泌されるのか、Aryscanを用いて超解像レベルのLIVEイメージングによって損傷時に分泌される瞬間を追っている。また、組織液や血流に乗ってどのようにターゲットの細胞へ運ばれるのか膜損傷によって分泌されたマイオカインの生体内の動きに迫りたいと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

細胞膜損傷修復後に起こるエキソサイトーシスにより供給された修復膜がどのように変化するのか詳しく追跡した。膜修復のため供給された膜によってエクトゾームまたはエクソゾームを形成し、細胞質内の物質を細胞外へ分泌する現象を捉えることに成功した。培養細胞(BS-C-1, NIH3T3, C2C12, MKN45, MKN28, BRMEなど)を用い、シリンジローディングなど様々な損傷法によって培養細胞の細胞膜を損傷し、細胞外小胞形成過程を形態学的に観察した。また、金コロイド(10nm)処理を行ったquantifoil UltrAuFoil Holey Gold支持膜付き金グリッド上に培養細胞を滴下培養し、金グリッドをディッシュから引き剥がした直後にプランジャー(Leica)によって液体エタンへ凍結固定を行ない、クライオ電子顕微鏡(CRYO-ARM TM300, JEMZ300FSC, JOEL)にてトモグラフィー画像(厚さ12nm、日本電子提供)を得て形態学的に観察を行なった。また、LIVEイメージングによって、二光子レーザーによる損傷直後にナノサイズの細胞外小胞の離出が数多く観察された。クライオ電子顕微鏡観察では、損傷細胞から発芽様に突出または離出したエクトゾームが観察され、その内部にリボゾームや、様々なタンパク質と思われる構造物が高解像度で観察された。さらに Cal520によるカルシウムイメージングを用い、細胞膜損傷による細胞外シグナル伝達をとらえることに成功した。膜損傷時に分泌されるマイトカインとしてFGF1(aFGF)に注目し、損傷時のFGF1の細胞外への分泌を確認した。また、損傷時の小胞体から損傷膜への膜供給可視化に成功した。さらに、筋線維の修復ではRab23とRab34が膜損傷部に集まることを明らかにし、カルモジュリンが膜損傷部に集積することも確認できた。

今後の研究の推進方策

膜損傷によって汚染された細胞質がどのように元の状態に回復されるのか、その形態学的変化の過程を経時的に追い、その仕組みを明らかにする。これまで行った形態学的データについて画像解析処理および統計処理を行う。生化学的な実験とCa2+イメージング用いた新しいアプローチも行う。細胞質から分泌されるサイトカイン候補、FGFファミリー、炎症反応に関わるインターロイキンについてGFPの作製を行い、細胞膜損傷修復時におけるそれらの分泌動態を高速レーザー顕微鏡(Aryscan)によって観察を行う。シリンジローディングなどの損傷方法を用い、損傷時に分泌されるサイトカインをウエスタンブロティングによって検出する。遺伝子導入を行ったマウスを用い、生きた骨格筋線維内の膜供給ライブイメージングを行う。また動物走行実験を行い、運動による骨格筋からのサイトカイン(マイオカイン)の測定を行う。

次年度使用額が生じた理由

新型コロナ感染拡大のため海外で行う共同実験ができず、国際学会にも行くことができなかった。次年度も感染が続けば、国内実験を繰り返し、抗体やプラスミドなどの消耗品に使用する予定である。

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2022 2021 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 2件) 備考 (3件)

  • [国際共同研究] National Institutes of Health/Marine Biological Laboratory/Augusta University(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      National Institutes of Health/Marine Biological Laboratory/Augusta University
  • [学会発表] Shooting vesicles derived by endoplasmic reticulum fuse to plasma membrane in membrane repair2022

    • 著者名/発表者名
      Yui Hirose, Katsuya Miyake
    • 学会等名
      日本解剖学会総会
  • [学会発表] Isolation membrane formation and exocytosis by plasma membrane disruption2022

    • 著者名/発表者名
      Mai Konishi, Katsuya Miyake
    • 学会等名
      日本解剖学会総会
  • [学会発表] Rab23 and Rab34 are regulators of sarcolemma repair.2022

    • 著者名/発表者名
      Kana Murai, Youhei Egami, Katsuhisa Kawai, Nobukazu Araki, Takeshi Endo, Katsuya Miyake
    • 学会等名
      日本解剖学会総会
  • [学会発表] スタチンの細胞膜修復阻害効果と横紋筋融解症との関連2022

    • 著者名/発表者名
      バトゥチメグ テムーレン、三宅克也
    • 学会等名
      日本解剖学会
  • [学会発表] 筋ジストロフィーモデルマウスからの細胞株樹立とその細胞膜修復能力2022

    • 著者名/発表者名
      木下みのり、三宅 克也
    • 学会等名
      日本解剖学会総会
  • [学会発表] Calmodulin reacts rapidly to extracellular calcium influx by plasma membrane disruption2021

    • 著者名/発表者名
      Shizuka Majima, Katsuya Miyake
    • 学会等名
      ASCB
    • 国際学会
  • [学会発表] Rab23 and Rab34 are regulators of sarcolemma repair.2021

    • 著者名/発表者名
      Kana Murai, Youhei Egami, Katsuhisa Kawai, Nobukazu Araki, Takeshi Endo, Katsuya Miyake
    • 学会等名
      ASCB
    • 国際学会
  • [学会発表] Intracellular localization of Dysferlin/Amphiphysin2 in striated muscle and requirement of the intracellular vesicle fusion in membrane repair.2021

    • 著者名/発表者名
      Matsuda T.and Miyake K.
    • 学会等名
      日本解剖学会総会
  • [学会発表] Calmodulin reacts rapidly to extracellular calcium influx by plasma membrane disruption.2021

    • 著者名/発表者名
      Majima S., Miyake K.
    • 学会等名
      日本解剖学会総会
  • [学会発表] 細胞膜損傷による隔離膜形成と開口分泌2021

    • 著者名/発表者名
      小西真衣、三宅克也
    • 学会等名
      日本解剖学会第109回関東支部学術集会
  • [学会発表] 細胞細胞膜修復に関わる小胞体由来の膜供給の可能性2021

    • 著者名/発表者名
      廣瀬由衣、三宅克也
    • 学会等名
      日本解剖学会第109回関東支部学術集会
  • [学会発表] 細胞膜損傷時のカルモジュリンとアネキシンファミリーの動態2021

    • 著者名/発表者名
      真島 静、三宅克也
    • 学会等名
      日本解剖学会第109回関東支部学術集会
  • [学会発表] Rabファミリー低分子量Gタンパク質による膜修復機構2021

    • 著者名/発表者名
      村井花奈、三宅克也
    • 学会等名
      日本解剖学会第109回関東支部学術集会
  • [学会発表] 筋ジストロフィーモデルマウスからの細胞株樹立とその細胞膜修復能力について2021

    • 著者名/発表者名
      三宅克也、木下みのり
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] Shooting vesicles dirived by endoplasmic reticulum fuse to plasma membrane in membrane repair.2021

    • 著者名/発表者名
      MiyakeK.and HiroseY.
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] Intracellular Localization of Dysferlin/Amphiphysin2 in striated muscle and requirement of the intracellular vesicle fusion in membrane repair.2021

    • 著者名/発表者名
      Matsuda T. , Miyake K.
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] 多光子顕微鏡による筋ジストロフィーに関わる細胞膜修復タンパク質の動態2021

    • 著者名/発表者名
      三宅克也、高橋まい
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] Rabファミリー低分子量Gタンパク質による膜修復機構2021

    • 著者名/発表者名
      三宅克也、村井花奈
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] The requirement for cholesterol in membrane repair indicates a possible mechanism by which statins cause muscle injury.2021

    • 著者名/発表者名
      Miyake K. and Batchimeg T.
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] 細胞膜損傷法によるラット細胞株樹立とその形態学的特徴2021

    • 著者名/発表者名
      三宅克也、チョ ハヨン、カナヤ・ランダ、キン・チュウチュウナイン
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [学会発表] 細胞膜損傷による異常細胞質からの隔離顆粒形成と脱顆粒2021

    • 著者名/発表者名
      三宅克也、小西真衣
    • 学会等名
      第11回国際医療福祉大学学会学術大会
  • [備考] National Institute of Health

    • URL

      https://www.nih.gov

  • [備考] Marine Biological Laboratory

    • URL

      https://www.mbl.edu

  • [備考] Augusta University/Medical College of Georgia

    • URL

      https://www.augusta.edu/mcg/

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公開日: 2022-12-28  

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