研究実績の概要 |
平成30年度において,筋力トレーニング実施者14名および一般若年男性23名の動脈コンプライアンス,βスティフネスおよび動脈粘性を評価した。その際,動脈コンプライアンスおよびβスティフネスにおいては先行研究と同様に,筋力トレーニング実施者の動脈硬化が進んでいることを確認したが,動脈粘性については増加傾向を示すものの有意ではなかった。したがって,令和2年度においては結果を明確にするためにサンプルサイズの拡大を予定していた。しかしながら,2月下旬に新たな測定開始の準備を完成させたが,COVID-19の影響により,人を対象とした実験が難しくなったため,実験自体を断念した。 そこで,現在測定済みの被験者のデータをさらに詳細に分析することとした。全被験者(37名)を対象とし,動脈粘性と血圧および動脈硬化度との相関関係を検討した。結果として,動脈粘性は,頸動脈の収縮期血圧(r=0.408, p<0.05),頸動脈の脈圧(r=0.447, p<0.01)およびβスティフネス(r=0.459, p<0.005)とは有意な正の相関関係,頸動脈コンプライアンス(r=0.470, p<0.005)とは有意な負の相関関係が認められた。またステップワイズ分析を行った結果,頸動脈コンプライアンスのみが採択された。筋力トレーニングによる動脈硬化のメカニズムには動脈粘性が関与している可能性が示唆された。いずれにせよ,サンプルサイズを拡大していき,明確な結果を示すことが求められる。
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