研究課題/領域番号 |
18K10834
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
西多 昌規 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10424029)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 睡眠 / 生体リズム / 身体運動 / スポーツ / 注意 |
研究実績の概要 |
本研究は、慢性的な睡眠不足(睡眠負債)とスポーツ関連の身体運動との関連を検討する。得られた結果を踏まえて、睡眠時間の延長によって身体運動機能が回復・向上する機序の解明を目指すものである。24時間型の現代社会で問題となっている睡眠負債は、スポーツを含む身体運動に負の影響をおよぼしているにもかかわらず、脳神経基盤に焦点を当てた研究は少ない。これら一連の研究成果を踏まえ、睡眠負債の蓄積、さらに睡眠時間の延長が身体運動に与える影響を精神生理学的に検討し、その機序を解明しようと試みる。
具体的には、睡眠負債が運動機能を低下させるメカニズムを解明するために、睡眠負債が運動関連の高次機能に及ぼす影響を精神生理学的に調べる。睡眠時間を2週間にわたって通常より2時間程度短縮させた群(睡眠負債群)と睡眠時間を2週間にわたって通常より2時間程度延長させた群(睡眠延長群)、比較対照群を対象に実験を行う。介入開始前と介入1週間後、2週間後、介入終了後1週間後に、睡眠および高次機能の評価をそれぞれ行う。スポーツ関連の遂行機能として、サッカーを主題としたLSPT(Loughborough Soccer Passing Test)を採用し、高次機能の客観的評価として注意機能を測定するPVT(Psychomotor vigilance task)を計測する。
目標としては、今後得られる実験結果を分析し、主にアスリートを対象に、神経科学・認知科学の点から運動機能を向上させる睡眠指針の確立につなげていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度の前半は、実験に用いる課題LSPTの設営準備と倫理審査委員会の承認作業とを行った。本研究計画は、本学倫理審査委員会にて2018年12月に承認された。LSPTの機材設営は、場所の確保や機材の耐久性など難題があったが、解決され予備実験にて実施が可能となっている状態である。
また実験課題は、LSPTだけでなく、Rondo(鳥かご)という課題も採用した。Rondoでは、5m×5mの中で3人の対象者がパスを3分間にわたって回し、その際、協力者1人がボールを奪う役割を行う。3分間の中で何回ボールを取られたかの回数を計測する。サッカー競技で頻繁に見られる注意・運動機能を評価する目的である。
予備実験から、睡眠負債群2週間にわたって通常より2時間程度短縮させた群(睡眠負債群)の被験者確保に難航しており、介入期間の短縮や睡眠制限条件の緩和など、被験者の侵襲度を低くする方向で修正することを検討している。 行動計など睡眠覚醒リズムの計測は、準備段階でも順調に機能している。スポーツ科学から認知科学・睡眠科学まで幅広い領域での文献資料収集・知見集積にも時間を充当している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度前半において、本格的な介入実験を実施する。諸条件については前述したとおり、侵襲度を下げた条件(介入期間の短縮、睡眠制限時間の短縮)を設定して、研究の本来の目的が損なわれないよう留意しながら、被験者の数が増える努力を行う。2019年度中半までに対照群、介入群10名の実験を完了し、データ整理と統計解析に進む予定である。学内発表会での発表で内容を修正しつつ、学会報告の抄録作成、提出につなげていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本実験の開始が遅れに伴い。謝金の支払いも次年度となる。また、購入予定機器に新機種発売の予定があったため、その機器の次年度とした。
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