研究実績の概要 |
【背景】本研究は、慢性的な睡眠不足(睡眠負債)と身体運動との関連に着目し、睡眠時間の延長によって身体運動機能が向上する機序の解明を目指すものである。睡眠延長手段として日中の仮眠を3日間連続してとった群を睡眠延長群とし、通常の睡眠習慣を取った群を比較対照群として、スポーツ関連の高次運動機能を評価した。注意機能ならびに運動機能をみるRotation adaptation task(RAT)を課題として採用し、連日の仮眠による睡眠延長(睡眠負債解消)効果を評価検討した。 【方法】実験参加者は健常男性18名(22.7±2.7歳)であり、仮眠群9名と覚醒群9名の2群に分けて行った。実験期間はDAY1,2,3,4,11の5日間であり、DAY1,2,3は13時にRATを行い、インターバル期間60分をおいて、再度RATを行った。DAY4,11は単回のRATを行った。RAT試行時の所要時間軌跡長を評価指標とし、各RAT実施ポイントで群別に解析した。統計は、二元配置分散分析を用いた。本研究は、早稲田大学・人を対象とする研究に関する倫理審査委員会(承認番号2019-193)の承認を得て行われた。 【結果】所要時間(全角度)において、有意な主効果は認められなかったが、測定ポイントによる有意な主効果を認めた(F(2.5, 39.4) = 50.6, p < 0.001)。有意な交互作用は認めなかった。DAY1-Pre(1日目のインターバル前)では群間に有意差は認めなかったのに対し、DAY11(保持テスト)で仮眠群が覚醒群よりも有意な所要時間の短縮を認めた(p = 0.024)。 【考察】所要時間(全角度)において、DAY11において覚醒群よりも仮眠群の方が有意な向上を示したことから、継続的な仮眠が運動記憶を長期的に保護・促進する可能性が示唆された。
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