研究課題/領域番号 |
18K10836
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
桜井 智野風 桐蔭横浜大学, スポーツ科学研究科, 教授 (30235220)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨格筋 / 筋損傷 / 女性 / 性周期 / エストロゲン |
研究実績の概要 |
エストロゲンの減少は,外傷発生率の増加や回復の遅延など,多くの悪影響に関連する.近年,様々な種類の病気や外傷に対するエストロゲンの保護効果は明らかになっている.また,衛星細胞の活性化および増殖を含む筋の修復および再生プロセスを刺激する上で重要な役割を果たすことが示されている.エストロゲンは筋の損傷や炎症に影響する可能性があり,特にヒトの骨格筋における修復や回復への生理学的作用および潜在的作用は明らかになっていない.よって本研究では,エストロゲンが骨格筋の炎症および修復過程に及ぼす影響を経時的に観察した. 実験は動物を用いた基礎実験と,ヒトを用いた応用実験にて行われた.実験動物としてWistar系雄性および雌性ラットを用いた.筋再生の過程におけるエストロゲンの効果を調査するために,コントロール (C) ラット,偽手術(Sham) ラット,卵巣摘出 (OVX) ラットならびに卵巣摘出およびエストロゲン投与 (OVX+E) ラットの骨格筋 (前頸骨筋 : TA) を塩酸ブピバカイン (BPVC) で損傷させた.損傷骨格筋は,無傷の筋と比較して筋損傷後に筋中カルパイン3 (CAPN3) 活性が上昇傾向を示した.損傷した骨格筋におけるHSP70質発現は,OVXラットよりCラットおよびOVX + Eラットで高かった (P<0.005, P<0.05).Pax7およびMyoD発現は衛星細胞の活性化および増殖を定義するのに役立ち,エストロゲンによって増加することが明らかになった (P<0.05).これらの知見は,骨格筋損傷に対するHSP70および筋衛星細胞の応答が女性特異的ホルモンのエストロゲンによって媒介することが考えられる. ヒトを対象とした実験として,成人女性を対象に腓腹筋に筋痛を作成し,性周期の差異による筋痛回復を,筋力,周径囲,関節可動域および血液中の筋損傷指標と共に観察する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ蔓延によるヒトを対象にした実験・動物実験の延期により遅延が認められる。現在、動物実験とヒトを対象にした実験を同時に進行し、研究終了に向けて動いている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
1)性周期がヒトの筋痛回復に及ぼす影響 エキセントリック運動負荷による筋痛モデルを用い実験を行う.組織画像より観察できる損傷治癒状況と発痛の関連性を考察する. 2)女性アスリートへの聞き取り調査とマネジメントプログラムの試案作成 これまでの結果により,女性への聞き取りとトレーニング方法の提案・実践を行うとともに,女性アスリートにも応用できる筋痛マネジメントとして最適なトレーニングプログラムを完成させる.また,筋損傷・筋痛に対して男女の特色を生かした治療方法の導入や,回復に向けたリハビリテーションへの導入等も試行し,本研究の社会的な意義を高める.
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次年度使用額が生じた理由 |
パンデミックの終焉を迎え、聞き取り調査の進行も順調に行われている。最終的な研究成果の発表や論文作成に関して、予算を使用する予定である。
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