研究課題/領域番号 |
18K10838
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研究機関 | 鹿屋体育大学 |
研究代表者 |
沼尾 成晴 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 准教授 (90454074)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 一過性有酸素性運動 / 運動習慣者 / 脂肪分解 |
研究実績の概要 |
脂肪酸結合タンパク質4(FABP4)は、脂肪分解や脂肪酸の輸送など脂質代謝の調節に関与するタンパク質であり、主に脂肪組織から血液中に分泌される。安静時の血中FABP4は、代謝異常などと関連し、疾患を予測する血液バイオマーカーとしての重要性が示されている。その一方、一過性有酸素性運動中にも血中FABP4の増加が報告されている。この運動中の血中FABP4増加は、運動による脂質代謝亢進に伴う生理的反応と考えられるが、運動中の脂質代謝と血中FABP4との関係はこれまで明らかになっていない。これらの関係を明らかにすることは、運動時における血中FABP4の生理的役割の解明に寄与するとともに、運動に伴う生理的反応を反映する生体指標の開発に繋がる可能性がある。そこで、令和2年度には、運動鍛錬者と非運動鍛錬者における一過性有酸素性運動中の血中FABP4濃度の変化の違いおよび脂質代謝との関連を検討することを予定していた。しかしながら、本課題では呼気ガス分析や採血を伴い、対象者への新型コロナ感染症の感染リスクが考えられたため、本課題の実施が叶わなかった。そのため、令和2年度は、令和元年度以前に取得したデータを基に、運動鍛錬者と非運動鍛錬者における漸増最大負荷運動に対する血中FABP4と脂質代謝との関連について検討した。運動鍛錬者(T群)と非運動鍛錬者(UT群)の漸増最大負荷運動前後のFABP4、遊離脂肪酸、およびグリセロール濃度データを解析した。その結果、グリセロール濃度は、運動中、T群で有意に増加し、その増加率はUT群よりもT群で有意に高かった。FABP4濃度は運動中、両群で有意に増加し、その増加率に有意差は認められなかった。また、運動前後のFABP4濃度とグリセロール濃度変化との間に有意な相関関係は認められなかった。これらのことから、FABP4濃度は、運動鍛錬状況および脂肪分解の違いに係わらず,漸増最大負荷運動時に増加することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成31年および令和元年度の研究は計画通り遂行できたが、令和2年度は新型コロナ感染症の感染拡大のため、予定していた研究計画を遂行することができなかった。そのため、研究全体の進捗状況はやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は運動競技者および非競技者を対象に、一過性有酸素性運動中の脂質代謝と血中FABP4濃度の動態との関連を検討する予定である。しかしながら、現在の社会情勢を考えると、対象者の確保が難しい可能性もあり、運動競技者もしくは非競技者のいずれかに絞って検討することや研究プロトコルの変更も視野にいれる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の感染拡大のため、令和2年度は予定していた研究計画を遂行することができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。繰り越した次年度使用額は物品費および人件費・謝金に使用予定である。
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