研究課題/領域番号 |
18K10846
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中島 弘美 茨城大学, 農学部, 教授 (30323215)
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研究分担者 |
六崎 裕高 茨城県立医療大学, 保健医療学部, 教授 (50550927)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 前十字靭帯 / 膝蓋腱 / 付着部軟骨層 / 軟骨細胞 / 細胞外基質タンパク / Sox9 / Ⅰ型コラーゲン / Ⅱ型コラーゲン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は力学刺激による腱・靱帯付着部形成における細胞・分子メカニズムを解明することである。そのために研究①我々が開発したウサギ力学負荷制御モデルを用いた研究、研究②ウサギ成長過程を用いた研究及び研究③ペリオスチンノックアウトマウスを用いた研究の3つの研究計画を立てた。 本年度は①膝蓋腱除負荷モデルを用い、間葉系細胞の軟骨細胞への分化を刺激し、初期軟骨形成遺伝子発現を促進するSox9と付着部軟骨層の細胞外基質タンパクのⅠ型・Ⅱ型コラーゲンの発現を調べた。また、②ウサギ成長過程では、昨年度の前十字靭帯(ACL)付着部軟骨層の検体を用い、細胞外基質タンパクのⅠ型・Ⅱ型コラーゲンの発現を調べた。 除負荷後の付着部軟骨層では、Sox9発現率はsham群では1週で最も高く、2週で大きく減少した後4週で増加し、6週で減少した。除負荷群では1週で最も高いが、2週で減少し、4週および6週で増加した。また、術後週齢による変化とsham群と除負荷群の処置の違いによる変化を比較すると有意な交互作用があった。Ⅰ型コラーゲンの発現は、両群共に週齢及び処置のいずれにも有意な変化はなかった。Ⅱ型コラーゲンの発現分布領域は除負荷群の4週及び6週でIntact群と比べて有意に低かった。これらのことから徐負荷処置はⅡ型コラーゲンの発現を減少させた。除負荷によって減少したⅡ型コラーゲンを補うために転写因子であるSox9が増加し、前駆軟骨細胞に作用して軟骨細胞を増殖させた可能性がある。 ウサギ出生後のACL付着部軟骨層のⅠ型コラーゲン消失時期は生後2週齢で、同じ線維軟骨から成るウサギ半月板のⅠ型コラーゲン消失時期とほぼ同時期であった。一方、Ⅱ型コラーゲンは2週齢で出現した。これはウサギが歩き始める時期と一致した。Ⅱ型コラーゲンが4週齢で急激に増加したのは、歩行や長骨の成長による力学的負荷の可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究②ウサギ成長過程を用いた研究を実施した。ウサギ出生後の前十字靭帯(ACL)付着部軟骨層の発達は公表された。ウサギ出生後の膝蓋靭帯及び膝蓋腱付着部軟骨層の形成過程は現在、英文誌に投稿中である。 研究③のペリオスチンノックアウトマウスを用いた研究では、発注したヘテロペリオスチンノックアウトマウスの納入後、飼育・繁殖を行い、出世後は遺伝子タイピングをしながら検査に必要な任意の各週齢の頭数を確保している。加えてワイルドタイプのマウスについては任意の各週齢の頭数を確保して腱・靱帯付着部軟骨層の組織検査・形態計測を実施中である。
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今後の研究の推進方策 |
研究①では、我々が開発したウサギ力学負荷制御モデル・靭帯除負荷モデルを用い、免疫組織化学染色により、軟骨細胞の転写因子で細胞分化決定の中心的な役割を果たすSox9と付着部軟骨層の細胞外基質タンパクのⅠ型コラーゲンおよびⅡ型コラーゲンは既に検索済である。更に骨・軟骨細胞の分化に必須の“FGF-2、BMP”、軟骨細胞から産生される“アグリカン、テネイシン-C”の出現時期と局在を明らかにする。 研究②では、ウサギ出生後のアキレス腱付着部軟骨層における軟骨細胞の分化および細胞外基質タンパクの発現を調査し、細胞・分子メカニズムを解明する。 研究③のワイルドタイプマウスとペリオスチンノックアウトマウスを用いた研究でペリオスチンの有無による付着部軟骨層形成に関する細胞・分子反応と力学強度の違いを調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究②のウサギ出生後の膝蓋靭帯及び膝蓋腱付着部軟骨層の形成過程について、タイトル名「Differences in the development of fibrocartilage layers in the quadriceps tendon and patella tendon insertion in rabbits」で投稿中の論文があり、査読者とのやり取りで期日が掛かってしまい年度内の受理に至らなかった。そのため予定していた投稿料が未使用となった。また、研究①と研究②で使用する多数の一次抗体を購入予定であったが、一部購入した一次抗体の免疫染色の結果から予定の一次抗体を一度に購入するよりは、免疫染色の結果を判断しながら次の一次抗体を購入した方が良いと判断した。そのため購入予定の一次抗体購入費用が未使用となった。 次年度は、投稿中の論文が受理され次第、速やかにその投稿料に充てる予定である。また、一次抗体の購入も研究①と研究②の免疫染色の結果を踏まえながら購入していく予定である。
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