研究課題/領域番号 |
18K10850
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
結城 匡啓 信州大学, 学術研究院教育学系, 教授 (90302398)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | スピードスケート / 金メダリスト / 骨盤の動き / 3次元解析 / 上肢の動き / バイオメカニクス / エクササイズ |
研究実績の概要 |
本研究では,スピードスケートの金メダリストを含む国内トップ選手の滑走動作を対象に体幹の多分節剛体リンクモデル化により骨盤周辺部位の動きに注目して3次元的にとらえ,遊脚の動きが滑走速度の獲得に及ぼす影響についてキネティクス的に検討する。さらに,それらの知見をこれまでに究明された滑走動作の力学的メカニズムや優れた選手に内在する技術的要因に関連づけ,これまでに検討されてこなかった骨盤・体幹部を介した両脚間の身体重心の移動メカニズムについて解析することを目的としている。これらの研究目的を達成するために,本研究では4つの研究課題を設定している。このうち,以下の2つの研究課題について,初年度から研究を進めている。 課題1:スピードスケート氷上滑走における骨盤周辺部位の動きの解析方法を確立するとともに,すでに開発済のセンサースケートを改良する(実験1)。 課題2:3種の異なるエクササイズにおける選手の下肢の動作を3次元キネティクス的に分析し,骨盤周辺部位の動きに着目することにより,遊脚の動きが滑走速度に及ぼす影響についてバイオメカニクス的に検討する(実験2)。 当該年度では,昨年度に続き課題2を発展させ,9種類のエクササイズにおける選手の下肢の動作を3次元的に解析した。その結果,「ドロップスケートジャンプ動作」すなわち,台上から片脚で落下して着地したのち,すばやく側方に大きくジャンプするエクササイズ動作では,金メダリストが,支持脚側の肩を上方かつ後ろに引きながら接地し,支持脚側の肩を下げるように捻ることで骨盤の水平位を保っていることを明らかにした。このことは,優れた選手は,上半身の動きが先行して生じることにより支持脚を早く内傾させ,重心を支持脚側に残すことで,安定を保ちながら動きの精確性・再現性を高め,効果的に側方にパワーを発揮して重心速度を生み出しているととらえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度では,初年度に続き,課題2を課題1より優先し,さらに課題を拡大して9種類のエクササイズにおける選手の下肢の動作を3次元的に解析した。その結果,当初の予想(仮説)とは異なり,多くのエクササイズで金メダリストの上肢を含めた上半身の運動が,遊脚による加速動作に先行して生じており,そのことが競技レベルの劣る大学段階の国内レベルの選手とはもっとも大きく異なる点であることがわかってきた。 一方で課題1のセンサースケートの特別製作が,研究責任者のエフォートを十分に費やすことができず予想よりも遅れている。これを取り戻すには,研究責任者のエフォートを課題1に傾倒する必要がある。次年度(令和2年)で対応していくように考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,課題1に先んじて課題2を進め成果を得ることができた。しかし,当初の予想(仮説)とは異なり,金メダリストの上肢を含めた上半身の運動が,遊脚による加速動作に先行して生じており,そのことが競技レベルの劣る大学段階の国内レベルの選手とはもっとも大きく異なる点であることがわかってきた。このことは,これまでに明らかにされてきていない。そこで,この知見をさらに筋電図手法を用いて究明していくことにも本研究の活路が見出せる可能性があると考えている。この手法は,もとの研究計画にはないが,既存の計測機器(科研費補助金)を有効に活用することを考えている。このように,若干の上方への軌道修正を検討している。 また,次年度では本研究補助プロジェクトの前半2年間で得られた成果を積極的に学会や論文にするようアウトプットしていくと同時に,遅れている【課題1:スピードスケート氷上滑走における骨盤周辺部位の動きの解析方法を確立するとともに,すでに開発済のセンサースケートを改良する(実験1)】に取り組む。これが順調に進まなければ,【課題3:世界チャンピオンを含む15名の国内トップ選手の全力スピード滑走における遊脚および骨盤周辺部位の動きを3次元キネティクス的に分析し,それらを競技成績レベルと関連づけて検討することにとより,優れた体幹部および遊脚の技術的要因についてバイオメカニクス的に検討する(実験3)】に接続することが難しくなると受け止めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた実験のうち,特製スケートの開発における納品日が次年度となったため,次年度使用額が生じた。特製スケートを令和2年度には完成させ,次年度使用額は令和2年度請求額と合せて使用する予定である。 また,氷上滑走条件における実験が行えなかったため,次年度使用額が生じた。これについても,氷上条件下での実験を令和2年度には実施し,次年度使用額は令和2年度請求額と合せて使用する予定である。
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