研究課題
身体運動は情動に関与する複数の脳領域を同時に活性化することにより、多様な精神機能および心理的健康に有益な効果をもたらすことが示唆されている、しかし、運動の恩恵効果を最大限に享受する至適運動条件については明確となっていない。本研究では、脳機能向上効果を生み出す最適な運動条件をみつけだすために、免疫組織化学を用いた脳機能マッピング法をベースとして、運動時の機能的脳ネットワークの可視化とその運動条件依存性について解明することを目的とした。本研究ではまず、精神機能に対する運動条件依存性について明らかにした。うつ様行動をターゲットとし、実験動物(ラット)にさまざまな運動条件(異なる強度および時間)で急性トレッドミル走を行わせ、それぞれによる抗うつ作用を比較した。結果として、運動による効果的な抗うつ効果は、運動強度と運動時間の相互作用によって決定され、低強度あるいは30分以上の運動で効果がみられることが示唆された。さらに、運動および情動に関連する28脳領域を対象とし、神経活動のマーカーであるc-Fosタンパク質の発現から運動時に賦活する脳神経活動の空間特性を明らかにし、相関分析を用いた領域間共変動の定量化から機能的脳ネットワークを可視化した。機能的脳ネットワークの運動条件依存的特性を抽出するためにグラフ理論を適用した。結果として、脳領域間の全体的な機能的接続性は安静時に比べ運動時に減少し、次数分布のスケールフリー性に基づいて得られた機能的脳ネットワーク構造は運動強度に依存して異なることが示された。さらに、グラフ理論分析(モジュール性、次数中心性および媒介中心性)から、運動時の機能的脳ネットワークのクラスター構造およびハブ領域は運動強度により異なることが見出された。本研究の成果は、運動がもたらす脳機能向上の神経メカニズムの解明と至適運動条件の探索に新たな洞察を提供するものと考えられる。
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