研究課題/領域番号 |
18K10859
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
後藤 貴浩 国士舘大学, 文学部, 教授 (20289622)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 少年サッカークラブ / サッカーコーチ / 生活 / ノンエリート |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、地域の少年サッカークラブの指導者として働く元ノンエリートサッカー選手の生活実践を読み解き、スポーツ人材の地域社会への定着過程を明らかにすることである。研究初年度となる2018年度は、本研究の分析的立場となる「生活論」に関する文献調査(『生活環境主義のコミュニティ分析』,鳥越皓之ほか)及び事例とする対象クラブ指導者との調査打合せを行った。また、熊本県内の3つのクラブの指導者に聞き取り調査を行った。 聞き取り調査の結果、以下のことが明らかになった。第一に、指導者たちがこれまでのサッカー人生で築き上げてきた「サッカー人脈」の存在が、継続的なクラブ運営を可能にしているということである。特に、「OBコーチ」の存在は大きく、少年サッカークラブの運営には、コーチの再生産機能が重要な役割を果たしていることが分かった。 第二に、「儲からない」少年サッカークラブの運営に大手の資本が参入することはない。いずれのクラブも、必要な運営資金を確保するのに苦戦している。しかし、身近にある地域資源をブリコラージュ的に利用することで、どうにかクラブ運営を維持してきた。クラブ運営のために意図的に確保した資源ではなく、偶発的に存在した環境や社会関係を利用していた。 第三に、クラブと地域社会の関係がある。大きな資本を持たない地方の少年サッカークラブでは、会員増=収入増という原則から逃れることができないため結果的に市場(地域)を拡大するしかない。そのため、送迎バスを運行させ、複数の地域で会場を確保するという方法で地域という枠組みを乗り越えようとしていた。しかし、指導者たちは少年サッカークラブにとってその存立基盤となる「地域性」が重要であることを感じ取り、当該地域に市場価値が無くなりつつあっても「本拠地」との関係性をどうにか維持しているのであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年の研究計画は、文献調査による先行的知見の整理、調査対象クラブの確定と調査打合せ、対象クラブ(1クラブ)の現地調査であった。 文献調査は、方法論(生活論的アプローチ)および「地域スポーツ研究」については概ね整理することができたが、セカンドキャリア論については次年度以降の課題となった。対象クラブの選定については、予定の6クラブと打合せを行うことができた。そのうち、3クラブにおいて現地調査を行うことができた。このうち2クラブについては次年度に追加調査を予定している。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、熊本(2クラブ)及び東京(2クラブ)で「指導者の生活分析」「クラブ分析」「地域分析」に必要なデータ収集を行う。また、前年度に引き続き、「生活論」「地域スポーツ研究」「セカンドキャリア論」に関する文献調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査期間内に対象クラブ(3クラブ)の指導者の生活史およびクラブ運営に関するデータを収集することができたが、地域情報に関するデータについては対象者・機関の都合により収集することができなかった。2クラブについては、次年度追加調査を予定しており、その際合わせて調査することとする。また、スポーツ選手のライフコース(セカンドキャリア)に関する文献を収集する。
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