研究課題/領域番号 |
18K10867
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
齊藤 茂 松本大学, 大学院 健康科学研究科, 准教授 (10454258)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 上級審判員 / ストレス / 審判員の姿勢 / 選手との関係性 / 二律背反 / 競技の理解 |
研究実績の概要 |
2年目は昨年度(1年目)に引き続き、サッカー競技等の上級審判員にかかる心理的ストレスの発生機序について明らかにすることを目的とし、対象者の当該領域におけるライフストーリーの聞き取りを中心とした半構造化面接を行った。筆者はこれまでの研究(齊藤・内田,2016)において、審判員に「判定をされる側」の選手を対象とし、審判員の判定の印象調査を行ってきた。そこでは、審判員による判定(誤審の有無)以上に、選手は選手側の意見を聞こうとしてくれているのかといった、審判員の“姿勢”を重要視していると考察してきた。そこで、本研究課題においても引き続き、「判定する側」の審判員の姿勢に着目し、その姿勢が選手との “関係性”に与える影響について分析を行うことにした。そしてこのことにより、審判員の受ける心理的ストレスの発生機序の重要な一部分が明らかになると考えた。 これまでに得られた結果として、審判員が選手と良好な関係性を構築するためには、1.「選手の力を引き出す」、2.「選手の気持ちに添う」及び、3.「受け入れられる努力」をする一方で、4.「ぶれない」という二律背反となる考えの構造が明らかとなってきた。また、2年目の研究から新たな視点として、5.「競技の理解」の重要性が見い出された。この5.「競技の理解」については、例えば、「審判の研修に行かせてもらった時に、結構高い評価をもらって。その理由として、○○(競技A)理解、○○に関する理解が非常に高いみたいな感じで言っていただいて」、「いろいろな△△(競技B)を見て、どういう△△がされているかとか、ボールの回し方や攻め方、あとは守備と攻撃の駆け引きをどうやってやっているかとかを客観的に見てから、レフリーとしても見れるように」、といった発話データに見ることができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の調査内容は、対象者にとってナイーブな問題も含むこともあり、もともと研究対象者の確保が困難であったことに加え、年度末には新型コロナウィルス感染症の拡大があり、予定通りに面接調査を実施することが困難となった(次年度への延期、もしくは中止)。また、本研究の対象となる優れた上級審判員の人数は限られていることから、研究者の居住地周辺に限っていては研究対象者の確保は困難であり、今後の状況によっては、遠隔による面接等も検討していかねばならないと考えている。 こうした理由から、2年目の進捗状況は「やや遅れている」とした。今年度(3年目)は本研究課題の最終年度のため、新型コロナウィルス感染症の影響による研究の遅滞を取り戻していく努力や工夫をしていかねばならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は新型コロナウィルス感染症の収束状況も見ながら、引き続き、サッカー競技等の優れた上級審判員を対象とした面接調査(遠隔面接も含めて検討)を継続して行う。加えて、試合場面等の動画を見ながら行う再生刺激法(stimulated recall)を用いて研究を進める。 また、当初の計画の通り、審判員から「判定される側」にある選手や指導者を対象とした面接調査も可能な限り進め、「双方向」からのデータ取集に努める。 これらのデータ収集を完了した上で、今年度(3年目)は本研究課題の最終年度のため、審判員のための「心理的ストレス対処モデル」の構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症の拡大があり、年度末に予定をしていた面接調査、及び学会・研究会等が中止となり、そのための謝金や出張費等の支出が減少したことが主な原因である。また、これらに伴うデータ入力のための機器購入費や人件費の支出が減少したために、次年度使用額が生じた。 なお、次年度使用額については当該年度分をそのままスライドさせる形で、データ入力のための機器購入(複数台)、及び人件費に使用する計画である。
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