運動器のリハビリテーションにおける関節可動域(Range of Motion、以下ROM)は原則『他動的』に評価される。ところが、他動的なROM(以下他動ROM)が動作時の関節運動の大きさとは一致しないという見解が示されている。その理由として、我々の動作は通常『自動的』であり、円滑に運動を遂行するためには『他動的なROM拡大』に加え、可動範囲を『自動的に制御できる能力』が必要であることが考えられる。ところが、自動的なROM(以下自動ROM)を評価指標としてパフォーマンスとの関連を明らかにした報告は見当たらない。 そこで本研究では、自動ROM評価の重要性を明らかにするために、チアリーディングの開脚ジャンプを検証モデルとして、他動および自動ROMの拡大がパフォーマンスに及ぼす影響を明らかにする。最終的には、リハビリテーションや運動指導で最も基本となるROMの評価や介入に対して『「他動」「自動」による場合分け』という新しい視点をもたらし、効果的な運動介入に対するエビデンスを確立する。 課題解決のために横断研究によって他動および自動の股関節ROMなどの評価指標と開脚ジャンプ時の開脚角度との関連を検討する。本研究の対象者である競技経験1年以上のチアリーディング選手はパフォーマンス向上のために日頃から柔軟性を高めるための訓練を実施している。そのため、他動ROMは一般に比べて優れていると考えられ、自動ROMの優劣による開脚角度の違いを明確に説明できる可能性が高い。 今年度は横断研究での成果に基づき、自動ROM獲得のために必要な介入成果を明らかにすることを目的としていたが、新型コロナウイルスの感染により、縦断的な運動介入が困難な状況も相まって、予定していた内容のっ実施は困難であった。そのため、自動ROM改善のための介入エクササイズの科学的検証を目的とした横断実験を行った。
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