研究課題/領域番号 |
18K10878
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研究機関 | 西九州大学 |
研究代表者 |
管原 正志 西九州大学, 健康福祉学部, 教授 (20039564)
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研究分担者 |
甲木 秀典 西九州大学, 健康福祉学部, 講師 (00783375)
山口 裕嗣 西九州大学, 健康福祉学部, 講師 (00826513)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脊髄損傷健康運動実践者 / 健常者健康運動実践者 / 体温調節反応 / 暑熱環境 / 熱障害予防 |
研究実績の概要 |
30年度は、温熱環境適応状態下(夏季)において中性温度条件下(温度コントロール室)での相対的運動負荷時の体温調節反応、内分泌及び免疫の動態を検討した。測定対象者は、脊髄損傷健康運動実践者(車椅子バスケット)で30歳代の5名及び対照者として健常者の健康運動実践者で20歳代の5名である。測定時期は、平成30年8月より9月の10時より15時に実施した。測定条件は、室温35℃(暑熱環境)で60分間安静を保ち、その間の生体反応測定を行った後、室温28℃(温度中性域)でarm cranking ergometerを用い、運動を50%Vo2maxの負荷で30分間実施した。測定項目は、体重、全身3ヶ所の皮膚温、胸部と背部の皮膚血流量、心拍数、酸素摂取量、鼓膜温、乳酸、ヘマトクリット値、カテコールアミン、好中球の活性酸素種産生能、血清総抗酸化能(TAA)を安静時、運動30分終了直後、回復30分経過時にそれぞれ実施した。 運動負荷時の体温調節諸反応は、発汗量、皮膚血流量、食道温、カテコールアミンにおいて、脊髄損傷健康運動実践者と健常者健康運動実践者とに若干の差異が認められ、鼓膜温の上昇と皮膚温の上昇が健常者健康運動実践者より脊髄損傷健康運動実践者が大きい傾向であった。同様に、活性酸素産生能、血清総抗酸化能(TAA)は、脊髄損傷健康運動実践者が健常者健康運動実践者より亢進の傾向を示していた。また、35℃(暑熱環境)での安静における生体反応に脊髄損傷健康運動実践者と健常者健康運動実践者に差異はなかった。暑熱順応下の脊髄損傷健康運動実践者の体温調節の感受性や熱産生反応では、健常者健康運動実践者より劣る傾向であった。温熱性発汗は、脊髄損傷により発汗神経が傷害されると障害部位に対応した分節レベルの領域に無汗の部位がみられることから、脊髄損傷健康運動実践者の運動時の身体冷却の必要性が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30年度の温熱環境適応状態下(夏季)において中性温度条件下(温度コントロール室)での相対的運動負荷時の体温調節反応、内分泌及び免疫の動態を観察することができた。また、測定対象者は、脊髄損傷健康運動実践者(車椅子バスケット)の5名及び対照者として健常者の健康運動実践者の5名を確保することができた。結果について脊髄損傷健康運動実践者と健常者の健康運動実践者とに大きな差がなかったことは、脊髄損傷者の日常的運動習慣が自律性体温調節反応に大いに有効であることがより具体的に指摘できたことで、本研究が順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの成果を基により脊髄損傷健康運動実践者の実践的な運動実施形態負荷を実施して運動習慣の重要性を明らかにし、quality of life(QOL)の向上に繋げたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
30年度に購入を予定していた皮膚温度計測器(物品費)が、既存の計測器で対応できたこと。また、共同研究者による資料整理により人件費が未支出となったため、未使用額が発生した。次年度は、調査のための旅費等に充当する。
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