研究課題/領域番号 |
18K10880
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研究機関 | 國學院大學 |
研究代表者 |
千野 謙太郎 國學院大學, 人間開発学部, 准教授 (30443245)
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研究分担者 |
鈴木 康弘 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ研究部, 先任研究員 (00392697)
片山 敬章 名古屋大学, 総合保健体育科学センター, 教授 (40343214)
大家 利之 中京大学, スポーツ科学部, 准教授 (70610062)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 呼吸筋 / 努力性呼気筋 / 腹筋群 / 体幹回旋 |
研究実績の概要 |
外腹斜筋および内腹斜筋は努力性呼気に作用する呼吸筋であり,最も強力で有効な体幹の回旋筋でもある.外腹斜筋は外側腹筋群の中で最も表層に位置することから,その活動は表面筋電図法によって測定される.しかし,外腹斜筋の直下には内腹斜筋が位置することから,表面筋電図法によって測定された外腹斜筋の活動には内腹斜筋の活動が混入している可能性がある.超音波エラストグラフィは,組織内を伝播するせん断波の速度を測定することで,生体組織の弾性を非侵襲的に評価する画像診断技術である.超音波エラストグラフィによって筋のせん断波速度を測定する際には,関心領域を対象とする筋に合わせる.また,超音波エラストグラフィによって測定した筋のせん断波速度は,表面筋電図法によって測定した筋活動と高い相関がある.よって,超音波エラストグラフィを用いて外腹斜筋のせん断波速度を測定することで,内腹斜筋の影響を受けずに外腹斜筋の活動を評価することが可能である.そこで令和2年度は,表面筋電図法による外腹斜筋の測定の妥当性を超音波エラストグラフィを用いて検討する測定を行った.被験者に左右方向への体幹回旋を最大および最大下挙上負荷で行わせ,その際の右側の外腹斜筋の筋活動を表面筋電図法,せん断波速度を超音波エラストグラフィによって測定した.表面筋電図法によって測定した外腹斜筋の筋活動は,左および右回旋において負荷の増加に伴って有意に増加した.一方,超音波エラストグラフィによって測定した外腹斜筋のせん断波速度は,左回旋においてのみ負荷の増加に伴って増加する傾向が見られた.これらのことから,表面筋電図法によって測定した右回旋時の外腹斜筋の活動には,外腹斜筋の直下に位置する内腹斜筋の活動が混入していたと考えられる.よって,表面筋電図法を用いて外腹斜筋の活動を測定する際には,内腹斜筋の活動が混入する可能性を考慮する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究で最も重要な測定は,被験者が最大吸気口腔内圧を発揮した際の呼吸筋の活動を測定することである.しかし,令和2年度は重篤な肺炎を引き起こす新型コロナウイルスの感染が拡大し,収束することがなかった.新型コロナウイルスが収束しない状況は,被験者が本研究の測定に安心して参加することができない状況であるため,測定の実施を断念せざるを得なかった.そのため,令和2年度は当初の予定通り研究を進めることができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度も新型コロナウイルスが収束しない状況で,研究課題を遂行することが求められる.電子スパイロメータを用いる際には被験者ごとにマウスフィルタを交換するが,それだけでは新型コロナウイルスの被験者間感染を完全に予防することはできない.したがって,電子スパイロメータの使用,すなわち最大吸気口腔内圧の測定を断念せざるを得ない.そこで,令和3年度は吸気に作用する呼吸筋(肋間筋や胸鎖乳突筋)ではなく,呼気に作用する呼吸筋(腹筋群)に着目した研究を行うことにする.腹筋群の測定は体表面に貼付した表面筋電図電極や体表面に置いた超音波プローブを用いて行うことが可能であり,電子スパイロメータを用いた測定よりも新型コロナウイルスの被験者間感染を予防しやすい.腹筋群に関する令和2年度の研究実績に基づいて研究計画を変更し,新型コロナウイルスの感染予防を徹底した上で積極的に測定を実施することで,研究を推進させる.
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に予定通り研究を進めることができなかったため,次年度使用額が生じてしまった.令和3年度は測定の実施,学会大会への参加,雑誌への投稿などを積極的に行い,予定通りに予算を使用するよう心掛ける.
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