本研究の目的は、静的ストレッチング中の筋電気刺激が筋腱および神経系に及ぼす影響を明らかにすることであった。この研究目的を達成するために、本申請では以下の3つの実験課題を設定した;①静的ストレッチング中の筋電気刺激が、柔軟性や筋腱の粘弾性に及ぼす影響を明らかにする、②静的ストレッチング中の筋電気刺激が、筋力に及ぼす影響を明らかにする、③静的ストレッチング中の筋電気刺激が、脊髄の興奮性に及ぼす影響を明らかにする。本年度は、昨年度実施した実験①の論文を国際誌に投稿し、受理された。この論文では、静的ストレッチングと静的ストレッチング中に筋電気刺激を付加した群との間で、柔軟性の指標の変化に差はない事を報告している。また、実験②および③について実施した。実験②では、静的ストレッチングと静的ストレッチング中に筋電気刺激を付加した群との間で、発揮筋力や筋活動水準に差はみられない傾向があった。また、実験③についても静的ストレッチングと静的ストレッチング中に筋電気刺激を付加した群との間で、H波やM波の振幅値に差はみられない傾向にあった。これらの結果から、静的ストレッチング中に筋電気刺激を同時に行っても、筋力や神経系の観点から有益な影響は無い事が明らかとなった。このことは、当初仮説として、静的ストレッチング中に筋電気刺激を同時に行うことで筋や腱等に対する伸張刺激が増加し、先行研究で報告されている静的ストレッチングの作用が増強されるのではないかという仮説を否定する結果であった。
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