研究実績の概要 |
2010 年以降,「T2T を目標とする治療」が RA の標準治療となり,患者の QOL を長期的に最大限に維持するためには,痛みによる筋力低下を防ぎ,適切なリハビリテーションを実施することが推奨されている。このリハビリテーションは,患者の自己管理能力を養うことが重要である。本研究は,握力計や身体活動量計を用いたプログラムを実施し,RA患者の握力と1年後の健康状態を一般高齢者と比較した。機器を用いた支援の,RA患者における自己管理能力向上の有効性を検証することを目的とした。 RA患者9名(平均年齢67.6±9.2歳)と一般高齢者9名(76.2±4.5歳)を対象に,握力,簡易栄養状態評価(MNA),活動量調査を1年間継続して実施した。RA患者の平均罹病期間は22.8±11.7(範囲3~47)年であり,中央値は23年であった。MNAの平均値は24.7±3.6点であり,「低栄養のおそれあり」と判定されたものは3名であった。この3名以外はm-HAQ で寛解と判定された。初期値において,RA患者の握力最大値の平均値は13.3±6.6kg,一般高齢女性は22.8±4.5kgであった。1年後の握力最大値はRA患者14.3±7.1kg,一般高齢女性は21.9±4.3kgであったが,1年前と比較して,主観的健康観が悪くなったもの,新たに介護保険をうけたものがRA患者で5名であった。活動量は両群に有意な差はみられなかった。 RA患者握力は一般高齢者の6割であり有意に低かった。握力の低値はRA患者特異の手指変形による影響が推測された。また,低栄養のおそれのあるRA患者において,低い握力がみられたことから,RA患者においては,活動量の維持よりも,食事管理の重要性が推測された。握力計, 身体活動量計などの機器で患者の状況を把握できたが,セルフマネジメント能力向上の支援には必ずしも有効ではなかった。
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