研究実績の概要 |
僅かな判断の遅れが勝敗を決める対戦競技では,対峙者の行動結果を素早く的確に予測する能力が求められる。従来,熟練者の優れた予測能力を支える知覚情報処理は,対峙者の行動文脈とその運動特徴を瞬時に捉えるためとされてきた。本研究の目的は,テニス競技の打球方向予測に着目し,熟練者が事前分布の「文脈情報」と最新に得る「運動情報」の2つの感覚信号をどのように統合し活用するのかについて,ベイズ統合(Kording and Wolpert, 2004)の考えに基づき明らかにすることである。心理物理学的手法を用いた知覚判断実験では,バーチャルリアリティ(VR)技術を駆使して対峙者の文脈(コートポジション)と運動(打球動作の方向性分)の両情報を任意に操作し,熟練者が予測時に採用する最適化情報の利用方略を特定する。
本年度は、ベイズ統合実験で用いる実験系ならびにVR環境の構築に尽力した。VR構築ではテニス場面を設定し,対峙者となるテニスアバターの運動情報を誇張表示する方法に成功した。結果の一部は、申請書提出前に実施していた実験データが蓄積していたこともあり、国際学会(NASPSPA2018)ならび国内学会(体育学会)にてポスター発表をおこなった。なおすべての実験系の設定や仮説構築については,オランダのアムステルダム自由大学にて共同研究ならびにミーティングにて議論した。Mann准教授(アムステルダム自由大学),中本准教授(鹿屋体育大学)との議論・アドバイスにより,申請書では詰めきれなかった研究の論理構成を進めることができた。
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