研究課題/領域番号 |
18K10896
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
勝又 宏 大東文化大学, スポーツ健康科学部, 教授 (40398350)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 知覚-運動連関 / 運動制御 / 錯視 / 二重課題 |
研究実績の概要 |
“視覚による認知-動作生成”の過程への意識や注意といった認知的活動の関与について検討するために、本研究は、大きさ錯視(Ebbinghaus効果)を誘発する標的に対する反応動作を課題とする実験パラダイムを用いた実験に取り組む.動作課題として、大きさ錯視を誘発する標的に対して、①提示された標的(Ebbinghaus図形の真中の円)の大きさを見定めて、その大きさについて標的を掴む仕草により表す動作(Matching)と②Matching 課題と同様の摘まみ動作により、標的に手を伸ばして摘まもうとする動作(Pantomimed Grasping)により、標的の大きさに対するその摘まみ動作の大きさの点から、錯視効果について検討する.本年度は、被験者の課題遂行において二重課題条件(Grasping/Matchingと同時に選択反応課題を遂行する)を課す知覚-反応動作実験を実施した.それによって、“意識を他の課題遂行へ向けざるをえない状況”における、錯視効果の減少および課題動作への影響の観点から、“標的知覚-動作生成”の情報処理過程への認知機能の関与について検討を試みた.いずれの動作課題に対しても錯視効果の度合は、二重課題条件によって減少することが確認された。この結果は、被験者の注意や意識が同時遂行された選択反応課題にも向けられたため、“標的の大きさ認識-摘まみ動作形成”に対する意識的な処理過程が妨げられながらも、異なる標的の大きさに応じた摘まみ動作の大きさが形成されたことを示している。これは、意識を課題遂行にとって妨げとなる情報から逸らしながら課題を遂行させることができることの可能性を示すものと考えられる。この成果について運動制御研究に関する国際誌に投稿し、現在、査読者からのコメントに対して修正を加えている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は当該研究期間の初年度にあたり、研究計画で予定している実験の遂行のための実験パラダイムとデータ獲得のためのシステム構築に時間を要した。現時点におけるシステムにより、計画している実験データ獲得・分析は遂行して論文投稿に至っているものの、研究計画の一部である課題動作中の脳波計測システムの導入に至らなかったため、それに関する実験については着手できていない部分において、当初よりも計画の進行がやや遅れていると認識している。
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今後の研究の推進方策 |
上述の昨年度実施による実験結果において、MatchingおよびPantomimed grasping課題における二重課題条件による錯視効果の減少の度合いより、二重課題条件はMatching課題においてより効果的である傾向を示しながらも、統計的な有意差は検出されなかった。しかしながら、これら二つの課題の視覚情報処理-課題動作遂行の過程への認知的活動の関与の仕方は課題の性質から異なることが考えられるので、この点についてPantomimed grasping(摘まみ動作を模倣する)ではなく、実際に標的を摘まむ動作によって検証することは、この実験パラダイムを用いた関連する研究領域にとって有益な知見をもたらすものといえる。この点については、当該研究期間における全体の研究計画の進捗に応じて取り組むことを検討したい。また、本研究計画の目的のひとつに掲げている「錯視を誘発する標的に対する課題遂行時の脳波を計測し、大脳皮質の活動パターンの点からの検討も試みる」という点に関しては、今年度前半にデータ計測システムを構築し予備実験に着手し、今年度中にデータを獲得できることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に掲げている課題動作遂行中の脳波計測のためのシステム構築の進捗に応じて、それに要する機器備品の購入が次年度に持ち越されている。このシステムについて今年度中に構築するとともに、実験の実施に必要な消耗品費が必要となる。また、研究成果の国際誌への発表における論文校正にかかる費用を使用予定としている。
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