研究課題/領域番号 |
18K10900
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
沢井 史穂 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (10245631)
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研究分担者 |
藤田 英二 鹿屋体育大学, スポーツ生命科学系, 准教授 (50506300)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 筋硬度 / Bモード超音波装置 / 年齢差 / 性差 / 部位差 / 筋厚 |
研究実績の概要 |
これまで超音波画像技術を用いて、ヒト骨格筋の量的特性(筋厚、筋断面積等)に関する研究は数多く行われてきたが、筋の硬さなどの質的特性に関する研究は方法論上の問題等から十分蓄積されていないのが現状である。しかし、近年開発された荷重超音波装置は、Bモード超音波装置のプローブに圧力計を内蔵することで筋組織そのものの変位量を安全かつ簡便に計測でき、小型軽量で持ち運びが容易であるため、多くのデータを収集することが可能である。本研究はこの装置を用いて人の骨格筋の硬さ(筋硬度)に関する基礎的データを収集することで、将来的にスポーツ選手のコンディショニングや障害予防、一般人の筋機能評価など、運動・スポーツ現場での幅広い応用につながる知見を得ることを目指すものである。 2018年度は、定期的なトレーニング習慣を有さない健常な若齢者(男性51名、女性56名)と高齢者(男性50名、女性78名)計235名を対象として、右側の上腕前部と大腿前部における筋硬度と筋厚を測定し、その年齢差と性差について検討した。筋硬度の年齢差は、上腕では女性のみ、大腿では男女ともにみられ、高齢群の方が若齢群よりも筋が硬かった。一方、筋硬度の性差は、高齢群の大腿のみにみられ、女性の方が男性よりも筋が硬かった。筋硬度の年齢差は筋厚の年齢差を反映していると考えられたが、筋硬度の性差の有無には筋厚以外の要因が関与している可能性が考えられた。 更に今年度は、次年度の研究計画の一部にも取り組み、若年女性40名(運動部に所属する者と所属していない者)を対象に大腿前部と後部の拮抗筋間で筋硬度に差があるか否かを検討した。その結果、大腿前部と後部の筋硬度の平均値に有意差は認められなかったが、運動部に所属していない一般群は大腿前部の方が後部より筋が硬いという結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の1年目にあたる2018年度は、幅広い年齢層を対象として上肢と下肢の筋硬度を測定し、日本人男女の性別・年代別筋硬度評価基準を作成することを目指していたが、若齢者と高齢者のデータ収集と分析に留まり、中年者のデータ収集まで及ばなかったために、性別・年代別評価基準の作成に至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、中年者の測定データを追加することで、日本人男女の性別・年代別筋硬度評価基準を作成する。また、当初の予定通り、若年(18歳~25歳程度)男女それぞれ20~30名程度を対象に、荷重超音波画像装置を用いて前年度と同様に身体各部の筋硬度を測定評価することで、筋硬度の部位差について検討する。測定対象とする部位は、上腕前部と後部、大腿前部と後部、下腿後部の計5部位とする。各部位の筋硬度の平均値比較を行うことに加え、上腕の拮抗筋間、大腿の拮抗筋間の筋硬度の個人差についても検討する。 2020年は、一過性の筋の短縮及び伸長による筋硬度の変化(筋の最大収縮時と伸長時、最大収縮後と伸長後)を検討するとともに、継続的な筋の短縮刺激(筋力トレーニング)および伸長刺激(ストレッチ運動)による筋硬度の変化を検討することにより、筋への力刺激の違いが筋の質的特性に及ぼす影響について明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は学会発表のための旅費の支出が見込みより少なくて済んだこと、また、被験者の多くが学内者であったことや、学外者でも粗品(消耗品)を進呈して謝金に換えたために、謝金の支払額が予定より大幅に節約できたことによる。 2019年度は、被験者を学外者に依頼することが多くなると予想されるので、消耗品と謝金の支出を見込んでいる。また、学会発表に加え、共同研究者との打ち合わせのための旅費の支出を予定している。
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