国内の中・長距離ランナーのべ470名を対象に、男子は15km/hおよび17km/h、女子は13km/hおよび15km/hでのランニング時の酸素摂取量、すなわちランニングエコノミーを測定した。また、ランニングエコノミーの下位要因であるストレッチ-ショートニングサイクル運動の遂行能力(SSC能力:リバウンドジャンプにおける接地時間および跳躍高)、股関節の等速性最大筋力、下肢のペダリングパワー、下肢の筋厚、全身の形態情報、スプリント走時のキネティクスおよびキネマティクスを調査した。 その結果、1)長距離ランナーにおいてSSC能力とランニングエコノミーの間に有意な相関関係が認められた。一方、中距離ランナーにおいては相関関係は見られなかった、2)リバウンドジャンプにおいて接地時間が短縮した選手ほど、ランニングエコノミーが大きく改善し、両者の間に有意な相関関係が認められた、3)前足部で接地する選手は、その他の接地パターンの選手と比較してSSC能力が高く、ランニングエコノミーが優れていた、4)ランニングエコノミーと筋厚の間に有意な相関関係が認められた、など、ランニングエコノミーに関係する要因について、先行研究とは異なる知見を含めて詳細に明らかにすることができた。 そして、それらの要因とジュニア時代のトレーニング履歴の関係について調査したところ、明確な因果関係までは明らかにならなかったものの、ジュニア時代に行うべきトレーニングや選ぶべきトレーニング環境についての様々な示唆を得ることができた。
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