研究課題/領域番号 |
18K10926
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
河辺 章子 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (30153000)
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研究分担者 |
高見 和至 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (50236353)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動制御 / 運動苦手 / 運動スキル / 習得 / 再現性 / 予測 |
研究実績の概要 |
本研究では,運動が苦手な人の動作を詳細に分析することによって,運動がうまくできない根本原因を探り, (1)運動の制御能力の基本的要素を明らかにする,(2)運動の制御能力を測る検査法を開発する,(3)運動の苦手な人の運動制御能力の習得を支援する方法を見出すことが本研究の目的である。 研究2年目の本年度は,昨年度に作成した運動が苦手な人を抽出するための質問紙の簡易版の精度が高く,十分に,運動の不得意者を抽出できるものと考えられたので,引き続き,この質問紙を用いて研究を進めていくこととした.2年目の本年度は運動スキルのうちでも,特に時間的制御能力を示すタイミング制御に焦点をあてて実験を展開した.まず,一方向(鉛直方向)に移動する光刺激に対するタイミング制御能力について検討した.移動光刺激の移動速度を変化させ(3種),動作として肘関節の屈曲と伸展の最大筋力発揮(ballistic収縮)を用いてタイミング動作を行わせた. 運動不得意群は得意群に比べてタイミング誤差が大きくなったが,光刺激の移動速度によるタイミング誤差への影響は,どちらの群にも見られなかった.動作(屈曲・伸展)による影響が大きく,運動不得意群では屈曲動作においてタイミング誤差が有意に増大した. タイミングコントロールに関する実験の二つ目として,運動が苦手な人はタイミング動作の実行にかかる時間を理解・認識できていないために,時間的な予測制御がうまくできないのではないかという仮説を立てた.手指動作から前方ステップや前方両足跳躍までの6種の随意運動を用いてタイミング課題をおこなわせたところ,手指から足関節動作までの体重移動を伴わない動作を用いたタイミング誤差は,運動が苦手な人は動作の大きさにほとんど影響を受けなかった.また,その誤差量は反応潜時と近似した値となっており,時間的予測そのものがうまくできないことが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
運動の得手・不得手を判定するための質問紙作成について,その質問項目を慎重に検討を重ねてきたため,予定よりも多少遅れている.2018年度に作成した簡易版の質問紙を,2019年度はその精度のよさから,本格的に使用することとした.昨年度(2018年度)は筋力の発揮様式や筋力のグレーディングに焦点を当てて実験を行ったが,本年度は運動スキルのうち,特に時間的要素を制御する,タイミングコントロールに焦点を当て,実験を実施した. 実験の方は,ほぼ予定通り,タイミング制御に関する二つの実験を行うことができた.得られたデータに対してより詳細な分析を行いたいと考えているが,それには相当の時間がかかり,すぐに発表できる状況には至らなかった.2020年度の学会にて,タイミング制御に関する研究成果を発表する予定である. 2018年度の研究成果については,2019年度の学会にてすでに発表済み(日本体育学会第70回大会)であり,また,2019年度の成果は2020年度の学会大会(日本体力医学会)にて発表予定である.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,随意的筋弛緩(脱力)について検討を加えるとともに,静的立位姿勢そのものにも何か違いがあるのではないかと考えられるので,COPの変化等より運動の苦手な人の運動特性をみていく予定である.また,これらの研究と並行して,最終年度であるので,今まで得られたデータを詳細に分析し,論文の執筆を行う予定である. 実験,分析ともにできるだけ補助者を雇上げて,効率よく実施する予定である.また,2018年度および2019年度に得られた研究結果を,原著論文として執筆し,学会誌に投稿する予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
複数の学会発表を予定していたが,学会の開催期間が学内業務(特別入試等)などと重複してしまい,発表の機会が減ったために,旅費等がかなり予定よりも少なくなった.また,研究室の学生たちが協力してくれたため,実験補助者等の雇上げ人数が予定よりも少なく済んだこと,多数の被験者がボランティアとして協力してくれたことなどにより,雇上げ経費が予定よりも大幅に減ったことによるものである. 次年度は最終年度であるので,研究成果発表などに経費を多く割きたいと考えている.また,時間的に厳しくなることが予想されるので,多くの補助者を雇いあげて予定通りに研究計画を遂行していきたいと考えている.
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