本研究は大学体育授業においてe-Learningを活用した身体活動増進プログラムが身体活動量,その他に与える影響を調査し,また大学体育教材としての有用性についても検証した。研究Ⅰは2018年3学期(10~11月)に大学体育授業の履修希望学生から履修学生(介入群)と履修抽選落選学生(統制群)に分け,授業前・後および1年後の身体活動量,レジスタンストレーニング量,静的ストレッチング量を比較した。身体活動量は3軸加速度計を用いた。対象は大学体育授業を履修した学生36名の介入群と,未履修学生45名の統制群である。介入前の身体活動量は介入群が24.8メッツ・時/週,統制群は23.5メッツ・時/週であり,日本の身体活動基準に達しなかった学生の割合は介入群が58%,統制群は62%であった。介入群の身体活動量は介入後に,統制群の1.49倍に増加し,介入1年後には1.29倍と高い値を維持した。レジスタンストレーニング量,静的ストレッチング量は介入後に有意に増加したが,介入1年後には介入前値に戻った。結論として,身体活動増進プログラムは身体活動量を短期および長期の増進効果が認められ,レジスタンストレーニング量,静的ストレッチング量には短期効果のみが認められた。 研究Ⅱでは2020年度前期において,本身体活動増進プログラム教材を全国63大学に提供し,使用した19大学1333名の学生による教材評価アンケートを行った。その結果,オンデマンド型授業に使用した学生は 5段階評価で教材の満足度が4.0,総合評価3.8と高い評価であり,両項目とも「非常によい,よい」が約70%であった。また,身体活動が習慣化した,体力が向上したと答えた学生は,順に71.5%,70.6%であった。 以上より,本研究に用いた身体活動増進プログラムは学術的意義に加え,コロナ禍においても有用な大学体育教材であることが示唆された。
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