研究課題/領域番号 |
18K10929
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
青木 健 山口大学, 教育学部, 准教授 (60332938)
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研究分担者 |
西尾 幸一郎 山口大学, 教育学部, 准教授 (70426534)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 保健科教育 / 暑熱環境 / 熱中症 / アクティブラーニング |
研究実績の概要 |
現在、学校教育において熱中症予防に役立つ知識を学ぶ教科や機会は点在化しており、熱中症予防としての効果を期待するには決して十分とは言えない。実際、熱中症予防の有用性を考える上では、①自己の健康観察を通して自分自身の健康状態を的確に把握することをはじめとして、②曝露さる環境要因の把握や評価、③熱中症により生じる各症状の実感による自己判断と回避の行動選択など、児童・生徒が教科を越えた知識の動員のもとで主体的に行動選択できるようになることが必要となる。そこで本研究では、医学教育で用いる問題基盤型学習を基にした場面シナリオによる主体的学習、体験的学習や実験ならびに系統講義からなる「熱中症予防のための一体型教育プログラム」を開発し、実際に学校現場において実施することにより、その効果を検証した上で、一般の教育現場への普及を図ることを目的とする。 本年度、中学校2校(附属学校および公立学校)において、中学校2年生を対象に保健の授業時間を用いて熱中症予防プログラムを活用した授業を実施した。具体的にはワークシートとともに、簡易的な暑熱模擬環境の体験用セットを製作し、授業内で用いた。その結果、授業の受講者の熱中症予防に対する理解度は上がり、授業前よりも熱中症予防への関心の度合いも向上を示した。一方で、「熱中症になったことがあるか」「熱中症になった人を見たことがあるか」の質問にはこちらの予想を上回る数の回答がよせられ、より早期における具体的な予防教育の実施の必要性が浮かびあがった。その点からも、より簡易的かつ効果的なプログラムに改善することが次年度以降の課題となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度、当初予定していた暑熱模擬環境の体験実習用セットの開発に先立ち、簡易式の暑熱模擬環境の小型実習用セットを作成した。さらにそれを用いて、すでに200人程度の生徒(中学生)を対象に、熱中症予防プログラムの授業を実施し、その教育効果や課題について検証することができた。その中で、より分かりやすい汎用性の高い簡易型実習用セットの製作の必要性が高まったことから、それらの作成にとりかかっており、次年度に向けて、順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2年次においては、1年次に行った熱中症予防プログラムの授業を、より多くの学校を対象に実施予定である。なお、1年次に行った授業時に浮かびあがった課題として先行研究において想定されていたレベル以上に、小学生時にすでに熱中症を体験している生徒がおり、年々、夏の暑さが増すなかで、より早期から繰り返しの予防教育を実施することの必要性が浮かびあがった。そのことを考え合わせると、より簡便に使用することのできる、実用性の高いアクティブラーニングプログラムを開発する必要がある。そこで、1年次より続けている汎用性の高い簡易型実習用セットの製作ならびに、プログラムで使用する熱中症に関連するデータの更新やワークシートの改変等を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定に先立ち、簡易型の実習用セットの作成を行ったため、使用額に差が生じることとなった。なお、初年度予定に入れていなかった実際の教育活動を実施したことにより、そこから見いだされた課題に対応するため、2年次にはより汎用性の高い実習用セットを複数作成すること、ならびにより精度の高い輻射熱画像を撮影するためのサーモグラフィーの購入等を予定している。
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