精神的健康の悪化は大学生において重要な健康問題の1つであり、特にここ数年のコロナ禍においては顕著であったことが考えられる。精神的健康の維持・改善において、運動の実施が効果的であることは多くの研究で明らかにされつつあり、我々も大学生を対象に、運動が精神的健康の維持・改善に寄与することを報告している。しかし、主体的に運動を行うためには最低限の体力が必要であり、体力がなければ運動を行う意思を持つことさえ困難であると推察される。そこで本研究課題では、大学生の4年間にわたる精神的健康度の変化に着目し、体力レベルによって精神的健康度が予測可能かどうか検討することを目的とした。 本研究は、当初2018年度に入学した新入生を対象に、4年間追跡調査を実施する予定であった。しかし、2020年に入り世界中に広まった新型コロナウイルス感染症の影響により、追跡調査時における被験者数が想定よりもかなり少なかったことから、被験者数を確保するため、2019年度に入学した新入生を急遽追加した。追跡調査は、毎年度末に精神的健康度(POMS2、CES-D、SOC)と身体活動量(IPAQ-short version)について質問紙にて行った。 2018年度入学生は昨年度4年間の追跡調査を終えた結果、POMS2において入学時から大学4年時にかけて、低体力群のみ「怒り-敵意」が有意に上昇(悪化)した一方、高体力群のみ「抑うつ-落込み」が有意に低下(改善)したことが示された。 本年度は2019年度入学生が4年生になり、最後の追跡調査を年度末に行った。本年度は33名の協力があり、昨年度卒業した学生と合わせて4年時の協力者は最終的に94名となった。現在、この94名を対象に縦断的に分析を行っており、大学4年間にわたる精神的健康度の変化について体力が予測因子となり得るかどうかについて検討しているところである。
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