研究課題/領域番号 |
18K10937
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
山田 洋 東海大学, 体育学部, 教授 (30372949)
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研究分担者 |
小河原 慶太 東海大学, 体育学部, 教授 (90407990)
田中 彰吾 東海大学, 現代教養センター, 教授 (40408018)
小金澤 鋼一 東海大学, 工学部, 教授 (10178246)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | スキル / 運動習熟 / 迷走神経 / モーションキャプチャ / 筋電図 / 伸張短縮サイクル / 運動連鎖 / 脳血流 |
研究実績の概要 |
スポーツおよび身体運動を用いた芸術表現(アート)の能力は練習により向上し、そのプロセスを「運動学習」という。我々は、『運動学習の効果がより早くより大きく得られるように、非侵襲的な脳幹賦活(迷走神経への電気刺激)を通常練習に加える新しい方法』を提案する。本研究の目的は、非侵襲的脳幹賦活がスポーツ・アートにおける運動学習を促進するか否かを決定することである。本研究の仮説は、『運動練習に迷走神経への経皮的電気刺激を併用した群は、運動練習のみをした群と比較して、スポーツおよび身体運動を用いた芸術表現(アート)の能力が、より早くより大きくなる』である。この仮説を検証するために、スポーツから「バドミントン」という対象物をコントロールする動作(課題1)、アートから「ジャグリング」という複雑な動作(課題2)を取り上げ、運動練習に迷走神経への経皮的電気刺激を併用した群と、運動練習のみをする群に分けて練習させ、運動学習の効果をバイオメカニクス的・機械工学的観点、および心理学・哲学的観点から評価を行う。 今年度は、運動学習を評価する指標を検討するため、テニスのショット、サッカーのボールリフティング、捕手のキャッチング、バレーボールのオーバーハンドパス等のスキルを評価する実験を実施し、伸張短縮サイクルや共収縮、運動連鎖を合目的的に使って運動を制御するメカニズムを捉えた。課題1においては、バドミントンのスマッシュを対象として、熟練者はテイクバック時に、大きく捻ることでその後の回旋運動を大きくし、下肢から体幹に運動を伝えることでパフォーマンスを高めるという運動連鎖の特徴を抽出した。課題2においては、ジャグリング動作習熟過程における脳活動を前頭前野の酸化ヘモグロビン量の変化から検討し、ジャグリングの上達が顕著な被験者は、練習により運動が自動化したことによる脳血流量の低下が認められたことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、運動学習を評価する運動課題の再検討、及びスキル評価方法の確立のために、テニスのショット、サッカーのボールリフティング、捕手のキャッチング、バレーボールのオーバーハンドパスを対象とした実験を実施した。その結果、優れたスキルを有する被験者は、伸張短縮サイクルや筋の共収縮、運動連鎖を合目的的に使って運動を制御するという特徴を捉えることが出来た。 これらを踏まえ、第一段階として、課題1においては、上記の指標を用いて、バドミントンのスマッシュを対象として実験を行い、熟練者はテイクバック時に、大きく捻ることでその後の回旋運動を大きくし、下肢から体幹に運動を伝えることでパフォーマンスを高めていたという運動連鎖の特徴を抽出した。さらに課題2においては、ジャグリング動作習熟過程における脳活動を前頭前野の酸化ヘモグロビン量の変化から検討し、ジャグリングの上達が顕著な被験者は、練習により運動が自動化したことによる脳血流量の低下が認められたこと見出した。また、他方で、電気刺激による迷走神経刺激の方法についても予備実験を実施し、スポーツ・アートにおける運動中に効果的に電気刺激を行う方法の確立を目指した。 これらの第一段階を経て、第二段階においては、未熟練者を対象に運動練習に迷走神経への経皮的電気刺激を併用した群と、運動練習のみをする群に分けて練習させ、運動学習の効果をバイオメカニクス的・機械工学的観点、および心理学・哲学的観点から評価を行うための実験を開始したが、2020年1月より実験が中断している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに運動学習を評価する運動課題の検討、及びスキル評価方法の確立を完了している。また、スポーツ・アートにおける運動中に効果的に電気刺激を行う方法については、予備実験を繰り返して数パターンの方法を考案しているため、最適な方法を種目に応じて適用する。 今後の研究の推進方策として、未熟練者を対象に運動練習に迷走神経への経皮的電気刺激を併用した群と、運動練習のみをする群に分けて練習させ、運動学習の効果をバイオメカニクス的・機械工学的観点、および心理学・哲学的観点から評価を行うための実験を引き続き実施する。ただし、2020年1月より実験が中断しており、現在も実験をすることが出来ないが、これまでに得られているデータの処理・分析を可能な限り進める。実験を再開することが出来るようになった際には、直ちに、被験者・実験補助者を集め実験を行い、データの収集に努める。 また、今年度は本研究課題の最終年度であるため、並行して、これまで行なった研究成果の公表を行う。今年度前半に開催される学会は少ないが、今年度後半で開催される学会を選んで発表を行う。論文投稿についても同様に実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品に関しては、前年度未使用額と今年度配算額を合わせて購入した。 旅費に関しては、概ね計画通りに使用した。 人件費・謝金を計画通りに使用することが出来なかった。具体的には、2020年1月、2月、3月に予定していた実験を実施しなかったため、実験遂行のための人件費・謝金を使用しなかった。同様に、実験データの整理、分析のために計上していた人件費・謝金も使用しなかった。
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