研究課題
当初の研究計画では,3ヵ年にわたり同一の体育授業を実施して得られた調査データを連結して分析・検討を行う予定であった.しかし,新型コロナ感染症の拡大によって2020年度は研究対象となる体育授業ならびに当該調査を実施できなかった.2021年度においては,研究対象となる体育授業は実施できたが,感染拡大の影響によりハイブリッド型の授業形態を余儀なくされ,ハイブリッド型の体育授業の効果を調査することとなった.一部異なる授業形態となったものの,予定通り3ヵ年にわたる調査データを得ることができた.データ分析では,体育受講者の精神的健康に寄与する要因分析に先立ち,まず年度毎に精神的健康度(GHQ28得点)に対する体育授業の受講効果を検証した.受講群および対照群共に,4月時点における精神的健康度が比較的低く(GHQ得点3以上),かつ週1回未満の運動頻度の集団を抽出し分析対象とした.さらに対照群では,7月時点の運動頻度が週1回以上の者は除外して,受講群と比較した.両群に対し2要因分散分析を実施した結果,2019年度データにおいてのみ受講群の精神的健康度が統計的に有意な改善傾向が認められた.したがって、精神的健康度に寄与する要因分析には2019年度における4月から7月にかけての変化量のデータを用いることとした。精神的健康度に寄与する要因分析にあたり,目的変数を精神的健康度,説明変数に運動頻度,不眠状況,摂食リズム,ネット依存度,学内・学外の友人数などを設定した重回帰分析をはじめに実施し,統計的有意な,一定程度の相関を有する重回帰式を作成できた.そして,最終年度の令和5年度においては,精神的健康度に関与する要因間の関係性も含めた分析を行うためにパス解析を実施し、良好な適合度を有するパス図を作成することができた.