研究実績の概要 |
解剖学は医療従事者を目指す学生にとって重要な科目であるが、教科書等の平面資料のみによる立体的な理解は難しい。ペーパークラフトは立体造形であり、その組立てはフロー状態を促すことから、解剖学学習に有用な新たな学習教材になると期待できる。そこで本研究は学習教材として実物大の人体解剖学ペーパークラフトの開発を目的とする。 実物大の腎臓および脾臓の学習教材ペーパークラフトの展開図および組立て説明書を設計し、展開図には解剖生理学の情報を記載した。いずれの展開図もA4用紙1枚に収まった。 学習教材としての評価のため、課題群として看護学生39名(平均28.9±8.6歳)およびボランティア群43名(平均23.0±15.8歳)に腎臓ペーパークラフトを組立ててもらい、年齢、組立て時間、組立てへの集中度、組立ての楽しさ、組立ての難易度、そして勉強に役立つかを質問紙調査した。組立て時間は、課題群で平均98±40分、ボランティア群で平均87±26分であった。年齢による傾向はみられなかった。課題群では、回答者の51.3%が組立てに集中し、34.2%が楽しいと回答したが、55.3%が組立は難しく、36.8%が勉強に役立つと答えた。ボランティア群では、回答者の94.3%が組立てに集中し、95.1%が楽しいと回答したが、70.0%が組立は難しく、87.5%が勉強に役立つと答えた。(高柳ら, 第27回日本人間工学会システム大会, 東京, 2019;高柳ら, 第124回日本解剖学会総会・全国学術集会, 新潟, 2019) 年齢による組立て時間に大きな違いは認められなかったことから、幅広い年齢層の学習教材になると期待できる。組立てに対し、ボランティア群の9割以上が「楽しく」「集中」して組立て、8割以上が「勉強に役立つ」と答えたことから、ペーパークラフトを好む学生には学習教材として有用であると期待される。
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