研究課題/領域番号 |
18K10939
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研究機関 | 埼玉県立大学 |
研究代表者 |
高柳 雅朗 埼玉県立大学, 保健医療福祉学部, 准教授 (80287523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ペーパークラフト / 解剖学教育 / 学習教材 / 医療従事者養成 / フロー / 肺 / 頭蓋骨 |
研究実績の概要 |
解剖学は医療従事者を目指す学生にとって重要な科目であるが、教科書等の平面資料のみによる立体的な理解は難しい。ペーパークラフトは立体造形であり、その組立てはフロー状態を促すことから、解剖学学習に有用な新たな学習教材になると期待される。そこで本研究は学習教材として実物大の人体解剖学ペーパークラフトの開発を目的とする。 これまでに設計した実物大の腎臓および脾臓の学習教材ペーパークラフトと同様にして、実物大の左右の肺および頭蓋骨の学習教材ペーパークラフトの展開図および組立て説明書を設計した。学習教材とするため、展開図には解剖生理学の情報を記載した。 左右の肺のペーパークラフトの展開図はそれぞれ18部品と22部品からなり、いずれもA4紙6枚の計12枚に収まった。組立て説明書は各A4紙1枚の計2枚となった。幅広い年齢層において組立て可能な学習教材であるかを評価するため、13歳から49歳までの3人の男女のボランティア(平均年齢33.3±18.4歳、非医療従事者)に右肺のペーパークラフトを組立ててもらい、年齢、組立て時間を調査した。非医療従事者である全員が問題なく組立てられたことから、解剖学の初学者も問題なく組立てられると考えられる。右肺のペーパークラフトの組立て時間は平均3時間48分±1時間19分であった。A4紙6枚から組立てるため、A4紙1枚からなる脾臓や腎臓のペーパークラフトに比べて時間がかかったと考えられる。組立て完成した左右の肺ペーパークラフトにより、肺門、水平裂、斜裂、肺葉、肺区域を実物大で立体的に理解することができ、体位ドレナージ等の学習に有効と期待される。 頭蓋骨の展開図は33部品からなり、A4紙7枚に収まった。組立て説明書はA4紙1枚となった。組立て完成した実物大の頭蓋骨のペーパークラフトにより、頭蓋骨全体の立体的理解および、構成する骨群の立体配置の理解に役立つと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに展開図および組立て説明書を完成した臓器の種類は、最終目標としている臓器の種類に達していない。また、新型コロナウィルス感染拡大防止対策としての所属機関の方針により、在宅勤務が原則となり、所属機関に設置してある機器を使用できないため、研究遂行に大きな支障をきたしている。更に、自粛要請や3密(密閉空間、密集場所、密接場面)を避けるため、質問紙調査を実行できず、かつ今後の質問紙調査実行の目処は立っていない。これらの理由により、現在の進捗状況を判断した。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルスの感染拡大および感染拡大防止対策等について、今後の動向や先行きを判断することが非常に難しく、終息の目処はたっていないと思われる。このため、今後の研究の推進方策として、主に各臓器の展開図および組立て方説明書の作成に重点を置く。これまでの開発および質問紙調査から得られた示唆を展開図および組立て方説明書に反映させ、より作りやすい展開図を作成する。具体的には、3Dモデリングにおける頂点数、辺数および面数を減らし、展開図におけるノリシロ数を減らして組立ての難易度を下げる等により、組立て時間の短い展開図の作成を目指す。学習教材として学習効果を高めるための工夫である、展開図内への解剖生理学情報の記載、学習材向けの配色、重要な専門用語への英語併記等はこれまで同様に実施する。また、学会発表及び論文による発信を行う。質問紙調査は、新型コロナウィルスに関連する諸事の動向を踏まえ、計画を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品などの購入費を当初の予定より抑えることができたこと、また、新型コロナウィルス感染拡大防止対策により学会の発表形式が変更となり、旅費を抑えることができたためため、次年度使用額が生じた。 次年度使用の当該助成金は、ペーパークラフト作成のための消耗品としてプリンタ用紙、学会発表のための旅費および論文作成費に用いる。
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