研究課題/領域番号 |
18K10941
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長尾 進 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (40207981)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | bujutsu / budo / martial arts / martial ways |
研究実績の概要 |
日本と海外との研究者・学術団体間で、budo(武道)の示す意味内容(概念)・特長・範囲などについて、かならずしも共通の認識を得ているわけではない。こうした状況に対して、budo (武道)が長い年月にわたって培ってきた特長や要素をあらためて抽出し、その再定義を行い、そのうえで海外の研究者・団体との議論・討論を通じて、budo(武道) についての正確・適切な理解を内外に発信することを、本研究は目的としている。上記の目的を達成するための方法として、外国人による武道研究の嚆矢であった Donn. F. Draeger の著述の分析を行い、彼の budo に関する見解を日本武道学会の国際大会等において紹介しつつ、海外研究者との議論を予備的に試みていた。 こうした予備研究をベースに、平成30年度は、Draeger の日本における武術修行や、東南アジアの武術フィールドワークにおいてパートナーを務めた米国および豪州の武術・武道研究者3名を招聘し、「術語 “budo”“bujutsu” について考える -Donn. F. Draeger の著述・修行を手がかりとして-」と題した国際フォーラムを平成31年3月23日に明治大学中野キャンパスにおいて開催した。本フォーラムにおいて、Draegerのとらえた bujutsu や budoは、hoplology(武器学・戦闘学)的観点からみると、多くの martial arts の中の一形態であることがあらためて確認された。ただし、budo は日本の歴史のなかで他の文化の影響を受けながら独特の発展を遂げ、「個々の修行者の人間性や振る舞いを、戦闘の範囲外でも発展させ,またそれを磨くために,bujutsu から派生した方法」であったということも確認された。一方で、武術・武道の英訳が martial arts / martial ways で良いかという課題も提示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度研究遂行の中心である上記国際フォーラムの開催は、当初平成30年秋を予定していたが、パネリスト選定の調整等に時間がかかり、年度末に開催せざるを得なかったため、フォーラムで得られた成果や、みつかった課題についての分析・検討が十分に行われていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和元年度においては、「bujutsu」や「budo」の概念についての議論を、より多くの内外の研究者との間で推進する。とくに、武術・武道の英訳が、 martial arts /martial ways で良いかという課題については、かなり根本的なテーマとなるが、むしろそうしたことを議論することによって、「bujutsu」や「budo」の本質が明らかになっていく可能性を秘めている。 また、budo が「個々の修行者の人間性や振る舞いを、戦闘の範囲外でも発展させ,またそれを磨くために,bujutsu から派生した方法」であったとするならば、その内容をより具体的に明らかにする必要があり、申請時に仮定的に示してある諸要素(精神性の深化、自衛志向、技能向上志向、生涯学習志向、運動のプロセス重視など)がそれに該当しうるか否かについての検証を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度研究遂行の中心である上記国際フォーラムの開催は、当初平成30年秋を予定していたが、パネリスト選定の調整等に時間がかかり、年度末に開催せざるを得なかったので、招聘旅費等の処理が次年度に繰り越したため。
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