研究課題/領域番号 |
18K10941
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
長尾 進 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (40207981)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | budo / bujutsu / bugei / hoplology / Draeger |
研究実績の概要 |
これまでに遂行してきた研究において明らかになった課題のうち、令和2年度(2020年度)においてはとくに、budo(武道)のこれまでの一般的英訳 martial arts に代わって、D.F.Draegerが用いた martial ways の概念についての検討およびディスカッションを行った。 武道における「道」の概念については、古代中国の「道」概念や朱子学的「道」概念などが複雑に取り込まれており、英語の way を用いることについての議論が必要であることが明らかになっていたが、このことについて、古英語・文献英語学を専門とする研究者、Draegerの業績に詳しい研究者をパネリストに、また「道」の概念に詳しい研究者をコメンテーターとして、「『武道』の英訳 “martial ways” をめぐっての対話 」と題するフォーラムを開催することなどによって、一定の結論を得ることができた。 具体的には、① budo(武道)の訳語として、martial ways を用いることは、way の語源的意味合いからしても適切であるし、問題はない。② ただし、martial arts が英語圏に浸透しているなかにおいて、あらたに martial ways を浸透させるには、相当なエネルギーと時間が必要。③ way と art を考えた場合、どちらが上位でどちらが下位ということはない。欧米において art は単なる芸術という意味を超えた人間存在そのものに関わる重要語である。④ ・すでにOED(Oxford English Dictionary)に採録されている budo は、そのまま定着させた方がよい。ただしその場合でも、budo が浸透せず martial arts に相当する arts martiaux しか用いられないフランス語圏への浸透は課題として残る、などであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度(2020年度)においては、新型コロナ感染症拡大の影響もあり、本研究課題遂行においてとくに重要である海外の武道研究者への対面取材、および討論はできなかった。遠隔会議システム等を用いて、ある程度の議論はでき、成果も得られたが、当初予定からすれば、やや遅れているという進捗状況評価にならざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
研究機関の延長を認めていただいているので、新型コロナ感染症の改善状況次第ではあるが、可能であれば海外の武道研究者との対話を実施し、上記した研究実績(成果)をさらに補足・裏付けることをしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の拡大状況が収束しないこともあって、海外武道研究者との対面でのインタビューやディスカッションのために予定していた旅費の未使用などがあったことが大きい。感染拡大の改善状況にもよるが、これまでの研究成果を補足・裏付けるうえでも、可能であれば海外での対話・調査を実施したい。
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