研究課題/領域番号 |
18K10942
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
深見 英一郎 早稲田大学, スポーツ科学学術院, 准教授 (10351868)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 運動部活動 / 指導者 / 指導ガイドライン / 選手選考の在り方 |
研究実績の概要 |
当初の目的は学習指導要領 保健体育編に示された各運動領域で習得が期待されている内容(技術・戦術、動作など)について、すぐれた体育教師は実際にどのような指導方法や指導言葉を用いて指導しているのかを明らかにすることであった。この研究を踏まえて、学習指導要領解説 保健体育編で取り扱われている運動領域の技術・戦術や動作の指導方法にフォーカスした教師用の指導手引書の作成につなげたいと考えていた。この手引書を活用することにより、多くの教師が自身の専門外の運動・スポーツを含む、すべての運動領域について自信をもって指導することができ、運動の苦手な生徒をはじめとする、すべての生徒たちに運動技術を習得させ、彼らの愛好的態度を高めることができるようになると考えた。しかし、校務が多忙で、なかなか学校及び教師のスケジュールとの調整がつかずデータ収集が進まなかった。同時に、運動部活動における指導者の主導性に関する論文が学会誌に掲載され、運動部活動の指導者の取組に関心がシフトした。特に、私自身が前任校にて運動部の指導者を務めていたときに最も苦労したのが、試合メンバーの選手選考であった。部員が100人以上いる団体競技で、どういう基準、手続きで選考すれば、彼らの不安や不満を最小限に抑え、納得のいく選手選考ができるかが課題であった。先行研究においても指導者が感じる困難の1つに選手選考が挙げられており(久保他, 1997; 中澤, 2011)、このことを部活動指導者にお話ししたところ、同じ悩みを感じている指導者は少なくなかった。そこで、新たに運動部活動における選手選考の在り方を明らかにしたいと考えた。
久保正秋・服部豊示(1997)運動部活動のパラドックス. 中澤篤史(2011)なぜ教師は運動部活動へ積極的にかかわり続けるのか:指導上の困難に対する意味づけ方に関する社会学的研究.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、運動部活動の指導者及び部員たちを対象に、運動部活動における望ましい選手選考の在り方に関する調査を実施したいと考えた。選手選考は指導者とすべての部員にとって最も高い関心事の1つであり、指導者は熟慮を重ねて選手選考を行っていると予想される。試合出場及びベンチ入りする人数は競技毎に異なるが、多くの部員がいるチームでは、必然的に試合に出場できない部員が出てくる。選手選考の基準や方法はチームや指導者によって様々であると予想されるが、補欠選手も含めてすべての部員が納得できる選手選考が理想であると考えられる。 そこで本研究では、運動部活動において選手選考がどのように行われているか、その現状を明らかにするとともに、指導者と部員両者にとって望ましい選手選考の在り方への示唆を得ることを目的とした。指導者と部員両者が納得する選手選考の条件を明らかにし、それを共有することに加えて、適切な手続きのもと円満な選手選考が実施できれば選手の競技意欲やチームの競技成績につなげることができると考えた。 今年度は、1)運動部活動における選手選考の在り方に関する調査用紙の作成、2)部活動指導者に対する調査の実施という2つを課題として実施する。1)に関しては、学校現場で実際に運動部活動の指導経験がある大学研究者らが、スポーツ庁(2018)の示した運動部活動の指導ガイドラインをふまえ、また日頃から部活動指導に取り組まれている複数の指導者からの多様な意見を参考にして調査用紙を作成する。2)に関しては、全国の中学校・高等学校から広く多様なデータを収集するために、全国の地域から偏りなく調査協力校に依頼して調査を実施する予定である。ただし、新型コロナウイルス感染症への予防対策のため、全国の中学校・高等学校が休校中であるため計画が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
選手選考とは、チームとして「どのようなメンバーを構成し、何を目指すのか」という、チームの活動目標・方針の根幹に関わる重要事項である。特に、大所帯の部員数を有するチームでは、「試合に出場できない」部員を決定する手続きでもあることからより困難を伴う。チーム状況によって、あるいは指導者や部員、保護者などの立場によって考え方や好み、相性などが様々に異なり、各々が理想とする選手選考は一様ではない。例えば、勝つことだけを考えれば部員の生活態度や人間性は無視して純粋に技能の高い選手のみを選考すればよい。一方で、一生懸命がんばっている部員や人が嫌がる雑用等を率先してやってくれる部員は多少実力が伴わなくても、指導者は試合に出場させたいと考えるだろう。スポーツ庁が示した部活動指導ガイドライン(2018)をふまえれば、選手登録メンバーの選考者については,すべての部員と指導者が話し合って決定していること,また選考基準については勝つことのみを重視したメンバー選考ではなく、日頃の練習態度や学校での生活態度なども考慮して選考されていることが望ましいと考える。 そこで本研究では、全国の中学校・高等学校の運動部活動指導者を対象にアンケート調査を行い、各チームにおける選手選考の実態及び課題を明らかにする。それらをふまえて望ましい選手選考を行うことができれば選手のやる気やチームの士気さらには競技力向上にも繋げることができると考えられる。 今後は、運動部活動における選手選考の在り方に関する調査用紙を完成させ、全国の中学校・高等学校の運動部活動指導者に対して調査用紙を送付し、データ収集を行う。その後、データ処理を進め、研究論文としてまとめ学会誌に論文を投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査用紙の作成及び、データ分析のため、新たなノートパソコンの購入を予定していたが、現在使用しているもので問題がなく、購入の必要がなかったため。 データ入力の作業をアルバイトとして雇用することを想定していたが、それに関しても思っていたほどデータを集められず、必要がなかったため。
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