研究課題/領域番号 |
18K10946
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研究機関 | 日本女子体育大学 |
研究代表者 |
星川 佳広 日本女子体育大学, 体育学部, 教授 (60394095)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スプリント / ジュニアスポーツ / 発育発達 / ステップ長 / ピッチ |
研究実績の概要 |
昨年度同様にコロナ禍が継続したことで、当初計画していた年度ごとの測定実施、およびそのことによる同一人物の身長成長と20m走タイム(加速能力)、ステップ長などの縦断的変化についての分析、およびその次に計画していたステップ長、ピッチの特徴を考慮したトレーニング効果の検証について実施ができない状況が続いている。 2021年度は、別途、高校生の陸上短距離選手を測定する機会を得て、短距離走に特化した思春期男子の加速能力とピッチ、ステップ長をまとめた。その結果、本課題が対象としてきた加速能力の高い中学生サッカー選手と比較し、20m走タイムは同程度であったが、サッカー選手の方がピッチが高い(短距離走選手はステップ長が大きい)ことが判明した。これは2020年度まとめた中学生サッカー選手ではピッチを高めることを意識したトレーニングが重要であることを支持する結果であったが、同時に、競技によって思春期の加速能力の高め方が異なることを示唆した。 また、成長期の縦断的分析に関する文献収集、抄読を進め、コロナ禍による研究方法・内容の変更にともなう次善の策としての妥当な統計法・データ分析法の検討を進めた。同一人物の縦断的測定の対象者を増やすことはできなくなったが、コロナ禍前にすでに2年間の縦断追跡してあった38名について、小学校時の身長変化のデータを取得することを昨年度より試み、2021年度になってそのデータを得ることができた。2021年度はそのデータの欠損等の確認、整理をし、コロナ禍前に取得したデータとあわせ、学童期から思春期にかけての身長成長パターンの描写およびPHV(Peak Height Velocity)の出現時期を妥当に算出する方法の検討を行った。これにより身長成長のピークの時期と加速能力の変化の程度を、ピッチ、ステップ長の変化と併せながら分析する目途がつけられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍により、同一人物の縦断的追跡の対象者を増やすことは中断せざるを得なくなったが、コロナ禍前にデータ取得済みの対象者に対して、本研究課題前の小学生時の身長変化のデータを取得、整理できたことで、本研究課題の遅れを大きく挽回することができたと考える。これにより対象者ごとに身長成長がピークになる第2次発育急進期を同定し、加速能力の変化と身長成長分を考慮したステップ長、ピッチの分析を行うことができる。このことにより思春期男子の加速能力評価システム開発に近づける。可能ならばその評価システムを踏まえ、個人ごとに身長成長の位置(PHV前か中か後か)とステップ長、ピッチの特徴を踏まえたうえで、加速能力向上の方向性を明示し、実際にトレーニングした効果を検証するところまでもっていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍前に取得済みであった38名のデータについて、2021年度に検討したPHV算出法をもとに、身長成長の程度と加速能力の変化、身長成長分を考慮したステップ長、ピッチの分析を進める。また、それをもとに発表済みの12-15歳対象のスプリント能力の評価参考値の進化版(暦年齢→PHVに対する相対年齢別)の作成を試みる。さらには、体力の発達に関する第2次発育急進期の縦断的研究の先行研究を多くあたり、本課題で取得したデータを活かす適切な統計方法を探る。 コロナ感染拡大の状況が改善した場合は、新規に中学1年生対象に測定を行い、個人ごとに身長成長の位置(PHV前か中か後か)とステップ長、ピッチの特徴を踏まえたうえで、加速能力向上の方向性を明示し、実際にトレーニングした効果を検証するところまでを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度はコロナ禍のため予定していた測定を実施することができず人件費・謝金を使わなかったこと、学会もオンライン参加となり旅費等が不要になったために繰越金が生じた。分析の方向性を変更したため、2020年度の使用計画としては、最終身長を予測するAuxalソフトや専門的な統計用ソフトの購入および、論文執筆にかかる費用(英文校正や投稿料等)を予定する。
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